DXの課題5つと解決策|「ヒト・カネ・データ」戦略を解説
2025年11月26日更新

DX推進という号令はかかるものの、プロジェクトが思うように進まない。「人材がいない」「予算が確保できない」「経営層のコミットメントが薄い」「現場が抵抗する」。こうしたDXの課題に直面し、頭を悩ませている推進担当者やプロジェクト責任者の方は多いのではないでしょうか。
問題が山積しているように見えますが、実はその根本にある原因は限られています。本記事では、多くの日本企業が直面するDXの課題について、「5つの根本課題」として構造化します。さらに、それらを解決し、経営層や現場を動かすための具体的な「3つの戦略(ヒト・カネ・データ)」を徹底的に解説します。
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DX推進の「課題」に取り組む前に必要な3つの理解
DXの具体的な課題を見ていく前に、まずは「DXとは何か」、そして日本企業が置かれている「現状」について、共通の理解を深めておく必要があります。
1. そもそもDXとは?
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、具体的に何を指すのでしょうか。経済産業省は「デジタルガバナンス・コード3.0」において、DXを次のように定義しています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」
重要なのは、DXが単なる「デジタル化(デジタイゼーション)」ではないという点です。古い業務プロセスをそのままデジタルツールに置き換えるだけでは、DXとは呼べません。
DXの本質は、デジタル技術を手段として、ビジネスモデルや組織文化そのものを変革(トランスフォーメーション)し、新たな価値を創出し続けることにあります。
参考:経済産業省「デジタルガバナンス・コード3.0」DX経営による企業価値向上に向けて
2. 「2025年の崖」の検証とDXとの関連
DXの文脈で必ず語られるのが「2025年の崖」です。これは2018年に経済産業省が「DXレポート」で指摘した問題で、「もし企業が老朽化した既存システム(レガシーシステム)を刷新しなければ、2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性がある」というものでした。
2025年11月現在、この「崖」は現実のものとなったのでしょうか?
結論からいえば、多くの企業が課題解決に向けて動き出したものの、「レガシーシステムの刷新は道半ば」というのが実情です。IPA(情報処理推進機構)の最新の調査でも、DXの成果創出は進んでいる一方で、多くの企業がレガシーシステムに起因する課題に直面していることが指摘されています。
「崖」から落ちなかったとしても、DXの足かせとなる「技術的負債(老朽化・複雑化したシステム)」を抱えたままでは、2026年以降のさらなるデジタル競争で他社に大きく遅れを取るリスクは変わりません。今すべきことは、この問題を先送りせず、正面から向き合うことです。
参考:経済産業省「DXレポート2.2(概要)」
参考:IPA「DXの現在地とレガシーシステム脱却に向けて」
3. 日本のDXは「業務改善」で止まっている
もう一つの重要な現状認識は、日本のDXの多くが「業務改善」に留まっていることです。
総務省が発表した最新の「情報通信白書」でも、日本企業のデジタル・トランスフォーメーションの取組状況について、多くの企業が「一部の業務・プロセスでのみ実施」に留まっている現状がデータで示されています。実際に、IPAが2025年8月に発表した「DX動向2025」によれば、日本企業のDXの取組内容は「社内業務の効率化・自動化」(83.0%)が突出して高く、「新規製品・サービスの創出」(38.1%)や「ビジネスモデルの変革」(28.8%)を大きく引き離しています。
これは、本来のDXの目的である「新たな価値創出」や「ビジネスモデル変革」といった「外向き・全体最適」の取り組みではなく、「内向き・部分最適」な業務改善に留まっている企業が非常に多いことを示しています。DXの課題を考えるとは、まさに「なぜ、日本のDXは業務改善で止まってしまうのか?」という問いに答えることなのです。
DX推進を阻む5つの根本課題
なぜ、多くの日本企業でDXが「業務改善」で止まり、その先の「ビジネス変革」に進めないのでしょうか。その背景には、独立しているように見えて、実は深く関連し合っている「5つの根本課題」が存在します。
1. 経営層のビジョン不在とコミットメント不足
すべての課題の起点となるのが、経営層のDXに対する理解不足です。一般社団法人日本能率協会(JMA)が日本企業の経営者を対象に行っている「経営課題調査」においても、「DXの推進」は最重要課題の一つとして挙げられる一方で、「DXを主導するリーダー(経営層)の不在」がその実行を妨げる大きな要因として認識されています。
IPAの「DX推進指標とそのガイダンス」では、DXが進まない企業の典型的な課題として、「(経営者が)How(どうやるか)から入ってしまっている」「号令だけでは、経営トップがコミットメントを示したことにならない」と厳しく指摘されています。
「AIを使って何かやれ」「DX推進室を立ち上げたから、あとはよろしく」といった「号令だけ」の指示では、現場は何をすべきか分かりません。経営層が「デジタル技術を使って自社のビジネスをどう変革したいのか」という明確なビジョンと、それをやり遂げるという強力なコミットメント(関与)を示さない限り、DXは前に進みません。
参考:一般社団法人日本能率協会(JMA)「日本企業の経営課題調査」
参考:IPA「DX推進指標とそのガイダンス」
2. DXへの積極投資ができない
経営層のコミットメント不足は、そのまま「投資不足」という課題に直結します。「この30年で、米国ではデジタル投資額は3倍以上増えているが、日本はほとんど増えていない」との専門家の指摘もあります。そして、この原因は、企業規模によっても異なります。
- 大企業:レガシー維持費による「守り」のIT投資の圧迫
- 大企業の場合、予算の多くが「2025年の崖」の原因でもあるレガシーシステムの維持・運用費(守りのIT投資)に割かれ、DXのような新規ビジネス創出(攻めのIT投資)に十分な予算を配分できないという構造的な問題を抱えています。
- 中小企業:絶対的なリソース(予算・ノウハウ)不足
- 中小企業の場合はより深刻で、DXに回す予算、ノウハウ、人材といったリソースそのものが絶対的に不足しているケースが多く見られます。経済産業省もこの点を重視しており、中堅・中小企業のDX推進を手厚く支援する施策を打ち出しています。
3. DX人材の定義ができていない
「DXの課題は?」と聞かれ、多くの人が真っ先に挙げるのが「人材不足」です。しかし、この課題の本質は、単に「人が足りない」ことではありません。
三菱総合研究所(MRI)の分析によれば、多くの日本企業が抱える課題の本質は、「自社のDX戦略上、必要なスキルや人材スペックを定義できていない」ことにあります。
日米比較の調査では、米国企業がDXを牽引する「ビジネスアーキテクト(事業戦略を理解し、デジタルでどう変革するかを設計できる人材)」のニーズを急速に高めているのに対し、日本企業ではそうした「DXを牽引する人材」の層が圧倒的に不足していることが明らかになっています。
つまり、「DX人材がいない」と嘆く前に、そもそも自社が「どのようなDX人材を必要としているのか」を定義できていないことが、最大の問題なのです。「どのように定義するか」については、後述します。
参考:三菱総合研究所「DX推進のカギは、人材要件の可視化にあり」
参考:三菱総合研究所「日米比較で捉える、日本のDX推進の人材課題」
4. 具体的な新規事業へ展開しない
経営層のビジョンが曖昧で、投資も行われず、牽引する人材も定義されていない。その結果として現れるのが、「DXが業務改善で止まり、新規事業へ展開しない」という課題です。
本来DXで目指すべきは、「顧客に新たな価値を提供するビジネスモデルの変革」です。しかし、そこに至る戦略やリソースがないため、どうしても「内向き」のコスト削減や業務効率化といった、目先の「業務改善」がゴールになってしまいます。これはDX推進の「結果」として現れる、最も深刻な症状の一つと言えます。
5. 現場の抵抗とベンダー企業への依存
最後に、実行プロセスにおける2つの大きな壁が「現場の抵抗」と「ベンダー依存」です。
- 現場の抵抗
- 「新しいシステムは使いにくい」「今のやり方を変えたくない」といった現場の抵抗は、DX推進を妨げる大きな要因です。これは単なる怠慢ではなく、「変化への不安」や「スキル不足への懸念」といった心理的な要因が背景にあります。
- ベンダー企業への依存
- 社内にDXの知見や人材(特に牽引役の人材)がいないため、システム開発や要件定義をITベンダーに「丸投げ」してしまうケースです。ベンダーは業務効率化のプロではあっても、自社のビジネスモデル変革を主導してくれるわけではありません。三菱総合研究所は、この「ユーザー企業とIT企業(ベンダー)の役割分担」の再構築が、今後のDX推進には不可欠だと提言しています。
根本課題に対する3つの戦略
前章で特定した「5つの根本課題」は根深く連携していますが、決して解決不可能なものではありません。
DX推進担当者がこれらの課題、特に「経営層のコミットメント不足」や「現場の抵抗」といった巨大な壁に立ち向かうためには、個人の熱意や属人的な説得だけでは不十分です。必要なのは、客観的なデータと具体的なリソースに基づいた戦略的なアプローチです。ここでは、課題解決のための「3つの戦略」を提示します。
1. 【データ戦略】経営層と現場を動かす「DX推進指標」
DXが進まない最大の原因である「経営層のビジョン不在・コミットメント不足」や「現場の抵抗」を解決する最強の武器が、IPA(情報処理推進機構)が提供する「DX推進指標」です。これは単なる診断ツールではなく、経営層や現場を巻き込むための「戦略的なツール(客観データ)」として機能します。
- 経営層のコミットメントを引き出す「客観データ」
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「DX推進指標」とは、具体的にはIPAが策定した公式な自己診断フォーマットで、経営者や社内関係者がDX推進の現状や課題について認識を共有し、次のアクションに繋げるための「気づきの機会」を提供するツールです。
自社のDXの進捗状況を、「経営ビジョン」「人材育成・確保」「IT資産の分析・評価」といった35の診断項目について、「レベル0(未着手)」から「レベル5(グローバル競争を勝ち抜けるレベル)」までの6段階で客観的に評価できます。
「DX推進指標」の自己診断結果をIPAに提出すると、全提出企業や同業種・同規模の企業群と比較した「ベンチマークレポート」を無償で受け取ることができます。
- 「ベンチマーク比較」で自社の現在位置を共有する
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このレポートは、「自社がDXの取り組みにおいて、市場全体の中でどの位置にいるのか」を客観的に可視化します。「うちは業界内でこれほど遅れているのか」という事実は、経営層だけでなく、変化を拒む現場に対しても、変革の必要性を理解させる強力な材料となります。
推進担当者が「DXが必要です」と主観的に説得するのではなく、「IPAの公式指標に基づき診断した結果、我が社は全国平均より『経営トップのコミットメント』の項目が劣っています」と客観的なデータ(ファクト)を示すことで、経営層も課題を「自分ごと」として認識せざるを得なくなります。
2. 【人材戦略】DXを牽引する人材の育成と確保
「DX人材の定義ができていない」「新規事業へ展開しない」「ベンダーに依存している」という課題群は、すべて「人材戦略」の欠如に起因します。
三菱総合研究所(MRI)の分析では、日本企業の多くが「自社に必要な人材スペックを定義できていない」こと、そして特に不足しているのが「DXを牽引する人材(ビジネスアーキテクトなど)」であることが指摘されています。
「DX牽引人材」の育成と「技術人材」の外部連携
DX人材は、その役割の違いによって、2種類に大別できます。DX推進における人材戦略の最適解は、この2種類の人材の役割分担と人材確保の手段にあります。
- 1. DX牽引人材
- 自社のビジネスを理解し、「デジタルで何を実現すべきか」を設計し、経営層や現場、外部ベンダーと調整・交渉する人材。MRIはこれを「連携タスク」を担う人材と呼び、その重要性を強調しています。
- 2. 技術人材(専門家)
- AI、データ分析、クラウド構築などの高度な専門技術を持つエンジニアやデータサイエンティスト。
技術人材は、基本的に外部連携により、人材を確保します。なぜなら、対象となる専門技術は進化が非常に速く、常に最新の知見が求められるためです。また、採用市場での競争も激しく、全領域の専門家を自社で抱え続けるのはリソース的に困難です。したがって、必要な時に必要なスキルを外部の専門パートナー(ベンダー)から調達(外製化)する方が合理的です。
一方で、DX牽引人材は、自社内で育成(内製化)します。DX牽引人材は、技術力以上に「自社の業務プロセスや企業文化への深い理解」と「社内の調整・交渉力」が求められます。こうしたビジネスの勘所や社内人脈は、外部の人間が短期間で身につけられるものではありません。だからこそ、自社のビジネスを熟知したエース人材をDX牽引人材として配置転換し、育成することがDX成功の鍵となります。
この戦略的役割分担こそが、ベンダーへの「丸投げ」依存から脱却する最も効果的な方法となります。
育成コストを抑える「人材開発支援助成金」
「牽引人材」を社内育成(内製化)する上で課題となるコストについては、厚生労働省の「人材開発支援助成金」などを活用できます。これは、従業員のリスキリング(学び直し)のためにデジタル関連の訓練を実施した場合に、経費や賃金の一部が助成される制度です。
3. 【投資戦略】投資不足を解消する「補助金」活用術
「DXへの積極投資ができない」という根本課題に対しては、国の補助金を活用することが直接的な解決策となります。これらは単なるコスト削減策ではなく、経営層の投資判断を引き出すための戦略的なツールです。
中小企業こそ注目すべき「IT導入補助金」
特に中堅・中小企業にとって強力な支援策が「IT導入補助金」です。これは、業務効率化や生産性向上のためのITツール(会計ソフト、受発注システム、CRMなど)の導入費用の一部を補助するものです。
2025年度(令和7年度)の制度では、クラウドサービスの利用料(最大2年分)なども対象に含まれており、SaaSの導入によるスモールスタートを強力に後押しします。
新規事業のための「事業再構築補助金」
「既存業務の改善」に留まらず、「新規事業」に踏み出す場合は、「事業再構築補助金」が活用できます。これは、思い切った事業モデルの変革に取り組む企業を支援する大型の補助金です。これらの補助金に関する最新の公募要領や対象要件については、中小企業庁が運営するポータルサイト「ミラサポplus」などで確認することが重要です。
DXの課題を解決し、DXを推進する5つのステップ
5つの根本課題を認識し、「ヒト・カネ・データ」の3大戦略を理解したら、次はいよいよ実行に移します。DX推進は、以下の標準的な5つのステップで進めます。
1. DXの目的明確化とビジョン共有
DXの第一歩は、経営層が「デジタル技術を使って、自社をどう変革したいのか」というビジョンを明確に言語化し、全社で共有することです。これが曖昧なままでは、全ての施策が「業務改善」で止まってしまいます。
2. DX推進体制の構築
ビジョンを実現するための体制を構築します。重要なのは、単なる「DX推進室」を設置するだけでなく、前述した「DX牽引人材」を各事業部門やプロジェクトに任命し、権限を委譲することです。
3. 現状の可視化と課題特定
推進体制が組めたら、まず「現在地」を把握します。このステップで、データ戦略で解説したIPA「DX推進指標」を活用し、全社で議論しながら自己診断を行います。これにより、客観的なデータに基づいて取り組むべき優先課題が明確になります。
4. 施策の実行とスモールスタート
特定した課題に対し、施策を実行します。いきなり全社的な大規模システムを導入すると、現場の抵抗にあい失敗しがちです。まずは特定の部門で「小さな成功(スモールスタート)」を生み出し、その効果を全社に示していくことが重要です。この際、前述した「IT導入補助金」などを活用し、投資のハードルを下げます。
5. 評価・改善
DXは一度実行して終わりではありません。「DX推進指標」による診断を年1回実施するなど、取り組みの成果を定期的に評価し、次の戦略にフィードバックするPDCAサイクルを回し続けることが、変革を組織文化として定着させる鍵となります。
DX課題解決の5つの成功事例
前章までの課題や戦略を踏まえ、ここでは経済産業省が中堅・中小企業のDX優良事例として選定した「DXセレクション」の中から、特に「5つの根本課題」の解決ヒントとなる5つの事例を紹介します。
1. 現場主導のDXで「新卒定着率」も向上
建設業を営む株式会社後藤組(従業員221名)は、業界特有の人材不足、特に若手人材の育成・定着という課題に直面していました。同社は経営層が明確なビジョンを示しつつ、現場社員自身が「使いやすい」ツールを選定・導入する現場主導のDXを推進。専任のDXチームが技術支援を行い、現場社員がノーコードツールを活用して自ら業務アプリ(品質チェックシートなど)を開発できる体制を整えました。
この事例の核心は、DXを「現場の自分ごと」に意識改革したことです。現場に丸投げするのではなく、経営ビジョンとサポート体制を整えた上で、現場に「開発の主導権」を渡しました。結果として、業務効率化による残業時間削減だけでなく、若手社員が即戦力として活躍できる環境が整い、新卒者の定着率向上という「人材・採用戦略」にも繋がっています。
2. ビジネスモデル変革で「売上7割増」
事務用品などの卸売・小売業を手掛ける株式会社近藤商会(従業員178名)は、従来の「訪問営業」スタイルの限界と、DXが「業務改善」で止まってしまう典型的な課題を抱えていました。同社は、経営陣の強力なリーダーシップのもと、既存の営業スタイルを「訪問型」から「通販・インサイドセールス型」へと、ビジネスモデルそのものを転換しました。
これは「業務改善」に留まらず、デジタル技術を「ビジネスモデル変革」に活用した好事例です。この変革の結果、売上は7割増加し、受注や配送に関わる人員を8割削減するという劇的な成果を上げており、「DXで新規事業へ展開しない」という課題への明確な回答となります。
3. 自社ノウハウを「外販」し新規事業を創出
製造業(工業塗装)の株式会社ヒバラコーポレーション(従業員100名)は、ベンダー企業への依存という課題を乗り越え、DXの内製化に成功しました。同社は、本業である工場のDXで培ったノウハウや、内製化したシステム(生産管理、設備監視など)を、他社向けの「DXソリューション事業」としてパッケージ化し、外販するに至りました。
この事例は、「ベンダー依存」から脱却した先に「自社ノウハウの事業化」という新たなビジネスモデルを創出できる可能性を示しています。DXがコスト削減(守り)だけでなく、新たな収益源(攻め)を生み出せることを示しており、「新規事業へ展開しない」という課題を持つ企業の参考になります。
4. アプリ内製化で「データ活用」と「新規事業」を実現
建設業(地盤調査・改良工事)を営む株式会社コプロス(従業員227名)は、建設業におけるデータ活用の遅れやベンダー依存といった課題に取り組んでいます。同社は経営戦略のもと、DX人材(特に牽引人材)を内製化し、自社内で「日報管理アプリ」や「スキル評価BIツール」などを独自に開発・運用できる体制を構築しました。
これにより、現場のニーズに即したツールを迅速に開発・改善できるようになっただけでなく、蓄積されたデータをAIで活用し、高度な意思決定に役立てています。さらに、そのノウハウ自体を「外部事業者へのサービス提供」という新たなビジネスモデルにも繋げています。
5. 日次作業「3時間削減」を実現したスモールスタート
サービス業(産業廃棄物処理)の有限会社道環(従業員27名)は、「何から手をつければいいか分からない」という中小企業のDXの典型的な悩みを抱えていました。そこで同社は、いきなり全社的な大変革を目指すのではなく、まず「日々の集計・転記作業」といった、現場が最も負担に感じていたアナログ業務のデジタル化に着手しました。このスモールスタートにより、1日あたり3時間の作業時間削減という具体的な成果が出ました。
こうした「小さな成功」は、DXに対する現場の心理的な抵抗感を和らげることの重要性を示しており、次のより大きな変革へ進むための第一歩となります。
まとめ
本記事では、多くの日本企業でDX推進が思うように進まない「5つの根本課題」を構造的に解説しました。それらは、「経営層のビジョン不在」「積極投資ができない」「DX人材の定義ができていない」「新規事業へ展開しない」「現場の抵抗とベンダー依存」です。
これらの課題は一見すると複雑で巨大に見えますが、その根本には「何をすべきか(ビジョン)」と「どう進めるか(戦略)」の欠如という共通点があります。
重要なのは、これらの課題に推進担当者が一人で立ち向かうのではなく、戦略的に解決することです。本記事で提示した「3つの戦略」をぜひ活用してください。
- 【データ戦略】IPAの「DX推進指標」という客観的データを用い、経営層や現場と「現在地」の危機感を共有する。
- 【人材戦略】「DX牽引人材」を社内で育成し、技術人材は外部と連携する。
- 【投資戦略】「IT導入補助金」などの公的支援を活用し、投資のハードルを下げる。
DXは全社的な変革であり、終わりなき旅です。しかし、その第一歩は、自社の課題を客観的に特定することから始まります。まずは「DX推進指標」の自己診断に着手し、自社の「現在地」を可視化することから始めてみてはいかがでしょうか。
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DXの課題に関するよくある質問
Q. DXの課題として最も多く挙げられるものは何ですか?
多くの調査で「DX人材の不足」が最大の課題として挙げられます。しかし、本記事で解説した通り、その本質は単に「人がいない」ことではなく、「経営層のビジョンが曖昧なため、どのような人材が必要かを定義できていない」ことや、「DXを牽引する人材(ビジネスアーキテクト)が不足している」ことにあります。
Q. 中小企業でDXが進まない最大の理由は何ですか?
大企業がレガシーシステムの維持にコストがかかるのに対し、中小企業はDXに回せる予算、ノウハウ、人材といったリソースそのものが絶対的に不足していることが最大の理由です。まずは「IT導入補助金」などを活用して投資のハードルを下げ、身近な業務のデジタル化といった「スモールスタート」から始めることが現実的な解決策となります。
Q. 現場の抵抗が強くてDXが進みません。どうすればよいですか?
「今のやり方を変えたくない」といった現場の抵抗 は、多くの場合「変化への不安」や「DXの目的が理解できていない」ことが原因です。まずは経営層が「なぜDXが必要なのか」というビジョンを明確に共有することが大前提です。その上で、IPAの「DX推進指標」を使って「業界内で自社がどれだけ遅れているか」といった客観的なデータを示し、危機感を共有することが有効です。また、いきなり大きな変革を求めるのではなく、現場の負担を減らす「小さな成功体験(スモールスタート)」を積んでもらうことも抵抗感を和らげる上で重要です。
Q. 記事で紹介された「DX推進指標」はどこで入手できますか?
「DX推進指標」は、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)の公式サイトから無償でダウンロードできます。自己診断用のフォーマット(Excelファイル)や、具体的な診断の進め方を解説した「ガイダンス」も提供されています。診断結果をIPAに提出することで、全提出企業や同業種・同規模の企業群と比較した「ベンチマークレポート」も無償で受け取ることができ、自社の立ち位置を客観的に把握するのに役立ちます。
