採用動画とは

採用動画とは、企業が自社の採用活動において、求職者に対して会社の魅力や職場環境、業務内容などを伝えるために制作・活用する動画コンテンツのことです。これまでの採用活動では、求人票やパンフレット、採用サイトといった静的な情報が主流でした。しかし近年、動画によって「視覚」や「聴覚」を通じた五感的な情報伝達が可能になり、短時間で企業の雰囲気や社員の表情、現場の空気感まで伝えられる手段として、採用動画の活用が急速に広まっています。

採用動画の目的

採用動画の目的は、単に企業を「知ってもらう」ことにとどまりません。自社の文化や価値観に共感してくれる人材を惹きつけ、入社後のミスマッチを防ぎ、定着率を高めるという、人材戦略全体の質を高める役割を果たします。特に若年層の求職者は、スマートフォンを中心とした情報収集に慣れており、テキストよりも動画を好む傾向があります。動画を通じて「働く人の表情」や「職場のリアルな雰囲気」を感じ取れることは、応募の動機形成に大きな影響を与えます。

また、採用動画の持つ「拡散力」も採用動画の大きなメリットといえます。自社の採用サイトや求人プラットフォームに掲載するだけでなく、YouTubeやInstagram、X（旧Twitter）といったSNSを通じて広く発信することが可能です。バズを生んだ採用動画がメディアに取り上げられ、認知度向上につながった例もあり、採用活動の枠を超えてブランディング効果も期待できます。

採用動画が注目される3つの理由

企業の採用活動において、採用動画の活用が急速に拡大しています。特に人材確保が難化している現在、従来の求人広告やテキスト中心の採用サイトだけでは、求職者に企業の魅力を十分に伝えきれないという課題が顕在化しています。
そこで注目されているのが、動画という「視覚」と「聴覚」を使った双方向的な表現手法です。ここでは、採用動画がなぜ今、ここまで注目されるようになったのか、その背景を3つの観点から解説します。

1. 採用競争の激化

労働人口の減少に伴い、多くの企業で人材確保が難しくなってきています。特に若年層の獲得競争は年々激しさを増しており、いかに自社に興味を持ってもらうかが採用活動の大きな課題となっています。こうした中で、採用動画は自社の魅力や雰囲気を短時間で効果的に伝えるツールとして活用されています。

求人票や説明会では伝えきれない「職場のリアル」や「社員の人柄」など、いわば行間にあたる情報を補完できる点が、動画の大きな強みです。さらに、採用に関するマーケティングの視点を持つ企業が増えてきたことで、求職者の行動心理やファネル設計を意識した動画活用が進んでいます。たとえば「認知フェーズには会社紹介動画」「比較検討フェーズには社員インタビュー」というように、採用動画を戦略的に配置する取り組みも見られます。

2. 応募者の情報収集行動の変化

かつて求職者が情報収集を行う手段は、企業の採用ページや就職情報誌、説明会が中心でした。しかし、現在ではYouTubeやTikTok、Instagramといった動画SNSを情報源とする層が急増しています。特にZ世代の多くは、日常的に動画で情報を取得しており、「企業選び」もその例外ではありません。

このような世代に対して、テキスト情報のみで企業の魅力を訴求するのは非効率です。動画であれば、数分の視聴で業務内容や社員の雰囲気、オフィス環境までを直感的に理解してもらうことができ、情報伝達の速度と密度が格段に向上します。

また、スマートフォンの普及により、通勤中や休憩時間などの「スキマ時間」に気軽に動画を視聴することができる点も、採用動画の訴求力を高めている要因です。就職ナビサイトや求人票だけでなく、SNSを通じて偶発的に採用動画に出会い、企業に興味を持つという「発見型」の接点も増えています。

3. テキストだけでは伝わらないリアルの訴求

採用活動では、企業理念やビジョン、仕事内容、キャリアパスといった情報を伝えることは不可欠ですが、こうした要素をテキストだけで表現するのには限界があります。たとえば、「風通しのよい社風」や「若手が活躍している現場」といった抽象的な言葉は、受け取り手によって解釈が分かれやすく、誤解を招く可能性もあります。

そこで、社員同士の自然な会話や働く様子を映像で見せることで、企業が持つ空気感や価値観を、求職者にダイレクトに伝えることができます。また、オフィスの雰囲気や社員の服装、社内イベントの様子など、細部に宿るリアルが伝わることにより、「この会社に合いそう」「ここで働いてみたい」という共感が生まれやすくなります。

採用動画の種類4パターン

採用動画とひと口に言っても、その種類や目的はさまざまです。企業が発信する動画には、「誰に」「何を」「どのように」伝えたいのかという明確な意図があります。ここでは、採用動画における代表的な4つのタイプを解説し、それぞれの特性と活用シーンについて掘り下げていきます。

1. 社員インタビュー動画

社員インタビュー動画は、採用動画の中でも最もポピュラーな形式の一つです。実際に働く社員が登場し、自身の業務内容や働きがい、入社理由、キャリアの展望などを語るこの形式は、求職者にとって「入社後のリアル」を最もイメージしやすいコンテンツです。

とくに若年層や新卒応募者にとっては、自分と年齢の近い社員がどんな想いで働いているのかを知ることは大きな判断材料になります。たとえば「就活時は不安だったけれど、こんなふうに成長できた」といったエピソードは共感を呼びやすく、応募への心理的なハードルを下げる効果も期待できます。

社員インタビュー動画は企業のカルチャーや価値観を伝えるうえでも有効です。業務内容そのものよりも、「どんな人がいて」「どのような空気の中で仕事が行われているか」を映像で伝えることで、テキストや写真では伝わりにくい社風やチームワークの雰囲気が浮き彫りになります。

2. 事業紹介動画

事業紹介動画は、企業が手がけているビジネスやサービス、製品などを視覚的に紹介することを目的とした動画です。求職者の中には「その企業が何をしているのか、よくわからない」という理由で応募を見送ってしまうケースが少なくありません。特にBtoB事業の場合、消費者にとっては馴染みがなく、採用広報の段階でしっかり説明しないと企業理解が深まらないリスクがあります。

その点、事業紹介動画は、抽象的になりがちな事業領域を具体的に伝える手段として非常に有効です。製品やサービスの導入シーン、取引先との関係性、顧客への提供価値などを映像で示すことで、「自分が関わる仕事は社会にどう役立つのか」という点を具体的にイメージしてもらいやすくなります。

また、事業の将来性やビジョンを語ることで、志の高い求職者の共感を得ることも可能です。単に「売上が伸びている」「業界シェアが高い」といった数値的なアピールだけでなく、「世の中の何を変えたいのか」「どんな課題を解決しているのか」というパーパス（存在意義）を動画に織り交ぜることで、企業の軸がより伝わりやすくなります。

3. オフィス紹介動画

オフィス紹介動画は、実際の職場環境を視覚的に伝えることを目的とした採用動画の一種です。多くの求職者にとって、職場がどのような場所で、どんな雰囲気で仕事が行われているのかは大きな関心事です。とくにコロナ禍を経てリモートワークやハイブリッド勤務が浸透する中で、「オフィスにどれだけ通うのか」「どんな設備があるのか」など、具体的な働く環境への関心は一層高まっています。

オフィス紹介動画の最大の魅力は、企業文化を空間的・視覚的に体感してもらえる点にあります。また、実際に社員が働いている様子を盛り込むことで、よりリアリティを持って職場環境を伝えることができます。特に映像の中で笑顔や雑談の風景が見えると、「ここでなら自然体で働けそう」という安心感が生まれます。これはとくに若年層や初めて就職する層にとって重要な情報であり、応募動機の後押しとなる可能性が高い要素です。

4. コンセプトムービー

コンセプトムービーとは、企業の理念や存在意義、ビジョンといった抽象的な価値を映像として表現するタイプの採用動画です。具体的な仕事内容やオフィス環境を紹介する動画とは異なり、視聴者の感情に訴える構成を意識し、「この会社はどんな思いを持って事業をしているのか」「なぜこの仕事をやるのか」といった根源的な問いにアプローチするのが特徴です。

近年の求職者は、給与や条件といった表面的な情報だけでなく、「企業として何を大切にしているか」「どんな社会課題を解決しようとしているのか」といったパーパス（存在意義）への共感を重要視する傾向があります。そのため、コンセプトムービーは企業が「共感採用」を実現するうえで極めて有効なコンテンツです。

採用サイトの動画事例9選

今や多くの企業が、自社の採用サイトに採用動画を組み込み、求職者との接点強化に取り組んでいます。ここでは、採用動画をどのように活用しているかを、動画のタイプごとに実例とともに紹介していきます。

社員インタビュー動画3選

社員インタビュー動画は、実際に働く社員の声を通じて、職場環境や仕事のやりがいを視覚的に伝える手段です。ここでは、魅力的に制作された3つの企業事例をご紹介します。

1. 本田技研工業

本田技研工業（Honda）では、移動支援ロボットの開発に携わる若手社員のストーリーに焦点を当てた動画を採用サイト上に掲載しています。動画は彼女の職務内容を超えて、開発に込められた社会的意義や「移動の自由をすべての人に」という理念までを丁寧に描写。プロジェクトにかける情熱が画面越しにも伝わる内容です。

現場の試行錯誤やチーム連携、利用者の反応などが実際の映像を通してリアルに表現されており、求職者が仕事の意義や職場の雰囲気を自然に理解できる構成になっています。BGMや映像トーン、字幕の設計にも気を配っており、音声をオフにした環境でも情報が伝わるよう工夫されています。

このように、人物の想いと企業の理念が重なり合うコンテンツは、視聴者の感情を動かし、エンゲージメント向上にもつながる代表的な事例と言えるでしょう。

参考URL：UNI-ONE 人の暮らしが自由になる乗り物｜望月鞠花【私を動かすもの】Honda従業員インタビュー

2. ソニーグループ

ソニーの採用サイトでは、複数の若手社員のインタビュー動画が公開されています。動画では研究開発・商品企画・映像処理など各分野で活躍する社員たちが、自身の挑戦やキャリア観について語り、視聴者に等身大の姿を届けています。

ソニーらしい洗練された映像演出や職場風景のカットが随所に挿入され、最先端の現場で働く魅力が映像としてダイレクトに伝わります。スマートフォン視聴を前提とした字幕や見やすい構成も、求職者フレンドリーなポイントです。

この動画は、仕事を通して「自分のやりたいこと」を実現したいと考える方にとって、ソニーの企業文化や風土を直感的に感じられる貴重な導入コンテンツとなっています。

参考URL：若手社員インタビュー ～やりたいことを実現する ソニーへの情熱～ 【ソニー公式】

3. タカラトミー

タカラトミーでは、複数の若手社員が登場するインタビュー形式の動画を活用し、仕事の内容ややりがいをテンポ良く伝えています。おもちゃメーカーならではの「楽しさ」や「夢を届ける」姿勢が、社員の言葉や表情から自然と伝わる構成です。

開発・営業・マーケティングなど各職種の社員が、それぞれの視点で仕事内容や成長体験を語り、「好きなことを仕事にすることの意義」や「子どもたちに笑顔を届ける誇り」といったメッセージが印象的に響きます。編集のテンポ感やBGMの明るさにも工夫が施され、タカラトミーらしいブランドイメージを壊すことなく採用文脈に転化しています。

視聴者の共感を誘い、「こんな職場で働きたい」というポジティブな印象を持たせる構成は、ブランディングと採用を両立させる好例と言えるでしょう。

参考URL：タカラトミー 新卒採用ムービー

事業紹介動画2選

事業紹介動画とは、自社の中核を担う事業やサービスの魅力、そして企業としてのビジョンを視覚的に伝えることを目的としたコンテンツです。会社の方向性や提供価値を短時間で効果的に訴求する手段として、多くの企業が採用しています。

1. ワールドコーポレーション

この事例は、就職活動中の学生や転職を検討している社会人に向けて、「ワールドコーポレーションとはどのような会社か？」を明快に伝えることを目的に制作された動画です。全体でおよそ3分という短さながらも、同社の事業全体を効率的に把握できるよう工夫されています。忙しい視聴者の関心を引くために、テンポの良い構成と情報の凝縮が意識されています。

単なる業務紹介ではなく、働く人の成長や人生に寄り添う企業姿勢が強く打ち出されており、成長意欲の高い若手層にとっては大きな共感ポイントになります。

このように、ワールドコーポレーションの動画は企業理解を深めるだけでなく、不安や疑問を抱える求職者の心理的なハードルを下げる要素が随所に盛り込まれています。事業紹介とブランディングを両立させたいと考える企業にとって、非常に参考になる構成と言えるでしょう。

参考URL：☆3分で分かるワールドコーポレーション

2. ベルフェイス

ベルフェイス株式会社が提供するこの動画は、単なる会社概要を羅列するのではなく、「なぜこの会社が存在するのか」「何を目指しているのか」といった企業の存在意義に焦点を当てています。

製品やサービスの紹介だけにとどまらず、顧客との関係性構築や課題解決のプロセスにまで踏み込んだ内容です。結果として、ベルフェイスが単なるIT企業ではなく、顧客志向の価値提供を重視する企業であるという姿勢が伝わってきます。サービス開発に携わりたい人材や、提案型営業に興味がある求職者にとっては非常に魅力的な訴求となっています。

「共感から理解へ、そして共創へ」という構造が巧みに組み込まれたこの動画は、求職者に「自分がこの会社でどのような未来を描けるか」を考えさせるきっかけとなるでしょう。事業紹介にとどまらない、仲間集めのためのストーリーテリング手法として秀逸な一例です。

参考URL：ベルフェイス株式会社｜会社紹介ムービー

オフィス紹介動画2選

オフィス紹介動画は、社内の空間や働く環境を視覚的に伝えることで、求職者に実際の職場イメージを持ってもらうための重要なコンテンツです。

1. 富士通Japan

富士通Japanが制作したこの動画は、同社の事業紹介に加えて、リアルなオフィスの様子を映像で伝える内容となっています。特に印象的なのは、オフィス内のレイアウトや働く人々の様子が自然な形で盛り込まれており、視聴者が「この場所で自分が働くとしたら」と具体的にイメージできる構成です。

さらに、単なるオフィス紹介ではなく、富士通Japanが掲げる理念や働くことの意味についても映像内で触れられており、企業文化まで視覚的に感じられる完成度の高さが特徴です。採用における導入コンテンツとして理想的な動画と言えるでしょう。

参考URL：富士通Japan 会社紹介動画

2. 日本テトラパック

グローバル企業である日本テトラパックが制作したこの動画は、オフィスの先進的な設計と働きやすさの両立を強く印象づける内容です。実際の職場環境を多角的に映し出すことで、「どんな働き方ができるのか」「どんなカルチャーが根付いているのか」を、短時間で的確に伝えています。

このような動画は、採用マーケティングにおいて単なる情報提供以上の役割を果たします。ワークスタイルとカルチャーを映像で「体感」してもらうことで、応募者とのミスマッチを防ぎ、理想の人材との出会いを後押しするのです。

参考URL：日本テトラパック新オフィス紹介動画_Full

コンセプトムービー2選

コンセプトムービーは、企業の想いや理念、採用にかけるメッセージを象徴的に描き出す動画であり、単なる情報発信を超えて「共感」を得ることに主眼を置いた動画です。

1. リクルート

リクルートが制作した新卒採用向けのコンセプトムービーは、「なぜ自分は働くのか」「どうキャリアを築くべきか」といった問いを視聴者に投げかける、極めて感情的な訴求力を持つ作品です。社員紹介や業務内容の説明に留まらず、求職者の内面にダイレクトに響くメッセージを中心に構成されている点が特徴です。

映像と音楽の演出にも工夫が凝らされており、テンポの良い編集と力強いナレーションが、就活中の不安や迷いを抱える視聴者の心に働きかけます。「挑戦してもいい」「自分らしいキャリアでいい」と思わせることで、視聴後には前向きな気持ちが残るよう設計されています。

参考URL：【リクルート/新卒採用】コンセプトムービー『Follow your heart "躍れ。どしゃぶりの機会のなかで。"』

2. トヨタシステムズ

トヨタシステムズの動画は、「最先端のモビリティ社会を支える仕組みをつくる」という企業としての使命を主軸に据え、若手社員の想いや仕事のやりがいを映像化したものです。

採用活動では、業務内容の魅力だけでなく、「どんな人と働くのか」「その人たちはどんな価値観を持っているのか」が重要な判断材料になります。この動画は、それらを映像としてバランス良く提示しており、企業理念と人材像を自然に重ね合わせることができる構成になっています。

共感から応募へつなげるための導線がしっかりと設計されており、採用動画をブランディングの柱として活用したい企業にとって非常に参考になる一例です。

参考URL：トヨタシステムズ コンセプトムービー

採用動画5つの導入メリット

ここでは、採用動画を導入することで得られる主なメリットについて詳しく解説します。

1. 短時間で多くの情報を伝えられる

採用活動では、企業の特徴や魅力、業務内容、職場環境など多くの情報を求職者に届ける必要があります。しかし、従来の求人票や採用パンフレット、Webページといったテキスト主体の情報では、すべてを伝えきるには限界があります。そこで効果を発揮するのが、動画というメディアです。

動画は「視覚」と「聴覚」の両方を使って情報を受け取ることができるため、テキストに比べて情報の伝達速度と密度が圧倒的に高いという特徴があります。たとえば、3分程度の動画であっても、写真数十枚分、テキスト数千文字分の情報量を網羅することが可能です。背景に映るオフィスや働く人々の表情、話し方、声のトーンといった細かな要素から、企業文化や雰囲気が直感的に伝わるのです。

2. 企業の知名度が向上する

採用活動における最大の課題の一つが、「そもそも企業の存在を知られていない」という点です。特に中小企業やBtoB企業の場合、一般消費者との接点が少ないため、就職先としての認知度が著しく低いことも少なくありません。そこで採用動画は、認知拡大のための有力なツールとして活躍します。

動画はSNSや動画プラットフォームを通じて拡散性が高く、従来の採用チャネルでは届かなかった層へのアプローチを可能にします。SNSに動画を投稿すれば、検索やレコメンドを通じて企業に興味がなかった層にも偶然見つけてもらえる機会が生まれます。こうした「発見型接点」は、従来の求人媒体にはない特徴であり、求職者との新しい接点づくりにおいて非常に重要です。

また、拡散された採用動画がメディアに取り上げられたり、口コミで注目を集めたりすることで、単なる採用広報を超えたブランディング効果も期待できます。とくにストーリー性やクリエイティブに富んだ動画は、「採用動画なのに感動した」「この会社、面白そう」といった感想とともに広まり、企業の好感度向上にも寄与します。

3. 求職者とのミスマッチ防止につながる

採用活動において、入社後の早期離職や定着率の低さは大きな課題です。その多くは、採用段階での「認識のズレ」や「イメージギャップ」が原因とされており、いわゆるミスマッチによって生じます。こうしたミスマッチのリスクを軽減する手段として、採用動画は非常に有効です。

テキスト情報だけでは伝えにくい「社風」や「働く人の雰囲気」「日常の業務風景」を、動画で視覚的・聴覚的に伝えることで、求職者が入社前に具体的なイメージを持つことができます。たとえば、静かに集中して働く環境なのか、活発な議論が飛び交う風土なのか、上司と部下の距離感が近いのか、これらは言葉では伝わりにくく、文章による説明では解釈に幅が出てしまいがちです。

その点、動画は「そのままの職場」をありのままに伝えることができるため、求職者側も「自分に合いそうかどうか」を事前に判断しやすくなります。その結果として、入社後に「想像していたのと違った」というギャップを防ぐことができ、早期離職の防止につながります。

4. 求職者のエンゲージメントを高めやすい

採用活動の成功には、単に応募を集めるだけでなく、「この会社に入りたい」「一緒に働きたい」という気持ちを醸成することが欠かせません。求職者とのエンゲージメント（心理的なつながり）を高める手段として、採用動画は非常に効果的です。

動画には、ストーリー性や感情訴求を盛り込みやすいという特性があります。たとえば、ある社員が入社して苦労しながらも成長し、今では後輩を指導する立場になっている、そんなエピソードを映像化することで、単なる企業紹介を超えた「共感」や「憧れ」を引き出すことが可能です。求職者はそれを見て、自分の将来像を重ねたり、「自分もこんな風に働いてみたい」と感じたりすることで、自然と企業に対する愛着が生まれます。

また、求職者とのエンゲージメントは、選考中の「志望度の維持・向上」にも直結します。選考期間が長引くほど、他社への興味や不安が生まれやすくなりますが、動画を通じて継続的に情報発信を行うことで、候補者との接点を保ち、熱量をキープしやすくなります。

5. 採用コスト削減につながる

採用活動には、求人媒体掲載費、人材紹介料、説明会の運営コストなど、さまざまな費用がかかります。その中で、採用動画は一見コストがかかる施策に見えるかもしれませんが、長期的に見れば「費用対効果の高い投資」として、採用コスト削減に大きく貢献します。

まず、動画は一度制作すれば繰り返し何度でも活用できます。採用サイトや求人媒体、会社説明会、SNS、スカウトメールなど、さまざまなチャネルで二次利用・三次利用が可能です。これにより、説明会のたびに同じ説明を繰り返したり、営業資料を個別に作成したりする工数が大幅に削減されます。

採用動画6つの活用シーン

採用動画は制作して終わりではなく、その活用こそが成果を左右する重要なポイントです。せっかく高品質な動画を制作しても、適切なチャネルや場面で活用されなければ、求職者の目に触れずに終わってしまうリスクがあります。ここでは採用動画の代表的な6つの活用シーンについて詳しく解説します。

1. 自社採用サイト

採用動画の最も基本的かつ効果的な活用方法が、自社の採用サイトへの掲載です。求職者が企業に興味を持ち、最初に訪れるのが採用ページであることが多いため、この段階で印象に残る動画を配置することは非常に重要です。

特に、ファーストビューに動画を配置することで、テキストを読む前から視覚的に企業の雰囲気を伝えることができます。たとえば、オフィスの様子や社員の働く姿を短くまとめたダイジェスト動画を掲載すれば、企業の文化や空気感が一瞬で伝わり、「もっと知りたい」と感じてもらえる可能性が高まります。

また、採用ページに複数の動画を配置することで、ユーザーごとの関心に応じた情報提供が可能になります。たとえば、学生向けには新卒採用インタビュー、中途向けにはキャリアパス紹介、エンジニア向けには技術へのこだわりを語るコンテンツなど、ターゲット別に動画を用意することで、より高い訴求効果が得られます。

採用サイトについては、以下の記事で詳しく解説しています。
参考記事：【2025年版】採用サイトの動画事例9選！メリット・活用場面・失敗対策まで完全ガイド

2. 求人媒体・プラットフォーム

採用動画は、求人媒体やプラットフォームにおいても有効に活用できます。従来、求人媒体といえばテキストベースの企業情報や募集要項が中心でしたが、近年は動画掲載が可能な求人サイトが増加しており、企業の魅力を「動き」と「音」で伝えることができるようになりました。

特に、業種や職種によっては動画の有無が応募数に大きく影響することもあります。動画を掲載している企業は、そうでない企業と比べて印象に残る度合いが圧倒的に高く、求職者の比較検討の際に有利になります。

一部の採用媒体では、動画の視聴回数や完了率などの分析データも取得可能であり、効果測定と改善サイクルを回すことができる点も大きなメリットです。クリエイティブを変えることで応募率が変化するかといった検証も可能で、データドリブンな採用マーケティングが実現できます。

3. 会社説明会・イベント

対面・オンライン問わず、会社説明会や就職イベントでの採用動画の活用も、非常に有効な手段です。特に新卒採用では、初めて企業の情報を得るタイミングとして説明会が設定されることが多く、この場面でどのような印象を与えられるかが志望度に直結します。

採用動画を冒頭に上映することで、会の導入部分を印象的に演出でき、参加者の興味関心を一気に引き込むことができます。社員インタビューや事業紹介、コンセプトムービーなど、構成に応じて最適な動画を差し込むことで、理解度と共感度を高められるのです。

特にオンライン説明会においては、講話中心だとどうしても飽きが生まれやすく、途中離脱を招きかねません。動画を間に挟むことで視覚的な変化が生まれ、集中力を保ちやすくなる効果があります。BGMや演出が加わった映像によって、記憶にも残りやすくなるのもポイントです。

4. スカウトメール

採用活動においてスカウトメールは、企業側から求職者へ直接アプローチできる貴重な手段です。しかし、その一方で「他社と似たような文面ばかりで差別化が難しい」「開封率やクリック率が伸び悩む」といった課題も多くの企業が抱えています。そこで効果を発揮するのが、採用動画を活用したスカウトメールです。

テキストだけのスカウトメールでは、企業の魅力や文化を言葉だけで伝える必要がありますが、動画を添付・埋め込みすることで一気に訴求力を高めることが可能です。たとえば「1分でわかる当社の働き方」「社員のリアルな声を聞いてみませんか？」といった短尺の動画リンクを加えることで、視覚的・感覚的に企業の雰囲気を伝えることができます。

動画付きスカウトメールは、受信者の関心を惹きやすく、クリック率やエンゲージメント率が大きく向上する傾向にあります。実際に、動画を活用したメール施策では、クリック率が2倍以上になるという調査結果もあり、第一接点でのインパクトを残す手段として非常に有効です。

スカウトメールについて詳しく知りたい方は以下の記事でご紹介していますので、ぜひ参考にご覧ください。
参考記事：7つの実例でわかるスカウトメール成功術｜NG例・配信のベストタイミングも解説

5. SNS

SNSは採用動画を拡散するうえで非常に強力なチャネルです。YouTubeやInstagram、X（旧Twitter）、TikTokなどのプラットフォームを活用することで、企業の採用情報やカルチャーを多くのユーザーに届けることが可能になります。とくにZ世代を中心とした若年層は、SNSを通じて企業情報を取得する傾向が強く、動画を通じたブランディングはますます重要性を増しています。

SNSの特徴は「偶発的接触」と「拡散性」です。求人サイトにアクセスしなくても、SNSを見て「こんな会社あるんだ」と知ってもらえる可能性があります。いわゆる潜在層との出会いの場を広げられる点が、大きなメリットです。

また、各SNSごとに最適な尺・構成・表現があるため、プラットフォームごとの戦略設計も重要です。YouTubeでは5分以上のドキュメンタリー調、Instagramでは縦型のリール、TikTokではテンポ重視のショートコンテンツなど、特性に合わせた工夫が求められます。

6. 内定者フォロー・入社前支援

採用活動は内定通知で終わりではありません。内定後から入社までの期間に、いかに内定者の不安を払拭し、モチベーションを維持できるかが、入社率や早期離職率に大きく関わってきます。そのフォロー施策として、採用動画は極めて有効な手段です。

動画はスマートフォンで気軽に視聴できるため、内定者のライフスタイルにもマッチします。朝の通勤時間、夜のくつろぎ時間などに自然と企業と接点を持ち続けられる点も、大きな魅力です。このように、採用動画は内定者フォロー・入社前支援という「採用後半フェーズ」においても、非常に高い効果を発揮する重要な施策なのです。

採用動画の作り方6ステップ

採用動画を効果的に活用するには、闇雲に制作するのではなく、戦略的に設計・運用する必要があります。ここでは採用動画を成功に導くための6つの基本ステップを解説します。

1. 目的の明確化

採用動画を作るうえで最初にすべきことは、「なぜ動画を作るのか」という目的を明確にすることです。この目的が曖昧なまま進めると、制作物の方向性が定まらず、せっかくの動画が求職者にも社内にも響かない自己満足のコンテンツになってしまいます。

目的にはさまざまな種類があります。たとえば「企業の認知度向上」「求職者の興味喚起」「エントリー数の増加」「内定者フォロー」「選考辞退率の改善」などが挙げられます。重要なのは、それぞれの目的に応じて動画に求められる内容やトーン、構成が大きく変わるという点です。

さらに、「採用動画を作ることで自社の何を伝えたいのか」「求職者にどんな印象を持ってほしいのか」といったブランディング要素とも紐づけて目的を設定すると、制作後の活用フェーズでも一貫性のあるコミュニケーションが可能になります。

2. ターゲット設定

目的が明確になったら、次は「誰に向けて動画を届けるのか」、すなわちターゲットを具体的に設定する必要があります。年齢や職種だけでなく、就職・転職に対する意識、価値観、情報収集行動なども踏まえて、ペルソナレベルで掘り下げることが理想です。

たとえば、20代前半の新卒学生に向けた動画であれば、「会社の知名度が低い」「業界に馴染みがない」といった課題があるかもしれません。こうした場合には、視覚的に分かりやすく、感情に訴えかける構成が有効です。

一方で、キャリア採用や専門職向けであれば、「技術的な深さ」「キャリアパスの透明性」「職場の裁量権」など、より具体的な情報を求められる傾向があります。そのため、同じ企業が発信する動画であっても、ターゲットに応じて伝えるべき情報は大きく異なります。

3. 動画の種類を選定

目的とターゲットが定まったら、次は「どの種類の動画が最も適しているか」を選びます。前述したように採用動画には、社員インタビュー動画・事業紹介動画・オフィス紹介動画・コンセプトムービーなど、さまざまなタイプがあります。

たとえば、「現場で活躍する人の声を伝えたい」なら社員インタビューが適していますし、「企業の理念や世界観を表現したい」ならコンセプトムービーが適しています。また、「社内の雰囲気や働く環境を伝えたい」ならオフィス紹介動画が最適です。

ここで意識したいのは、「複数種類を組み合わせる」ことも有効であるという点です。1本の動画ですべてを伝えるのではなく、フェーズや目的に応じて動画を設計・配置することで、求職者が必要な情報を段階的に得られるようになります。動画の種類を選ぶ段階では、最終的な活用チャネルや配信形式も考慮することで、より一貫性のある動画設計が可能になります。

4. 撮影準備・制作

採用動画の目的やターゲット、種類が明確になったら、いよいよ撮影準備と制作のフェーズに入ります。社員が出演する場合は、出演者に事前に質問リストを渡しておくとスムーズです。ただし、あまりに台本どおりに話そうとすると不自然になるため、「方向性だけ伝えて、自然な会話を引き出す」スタイルが好まれます。撮影本番では、話す内容だけでなく、表情や姿勢、服装などの非言語的要素も動画の印象を左右するため、リラックスできる雰囲気づくりも重要です。

このように、撮影準備と制作は単なる技術的作業ではなく、「動画を通じて何をどう伝えるか」を実現するための重要なプロセスです。事前準備をしっかり行うことで、メッセージ性とクオリティの両立が可能になります。

5. 編集・配信チャネル選定

撮影が終わったら、次に待っているのが「編集」と「配信チャネルの選定」です。ここでは単に映像を繋げて終わりではなく、視聴者にとって見やすく、伝わりやすい構成に仕上げること、そして適切なチャネルを選び、届けたい人に確実にリーチさせることが求められます。

編集の基本は、「無駄を削ぎ落とし、伝えるべきメッセージを際立たせる」ことです。社員インタビューであれば、話が冗長になりがちな箇所を整理し、メリハリのある流れに再構成する必要があります。また、視覚的な強調としてテロップ・字幕・BGM・効果音などを適切に加えることで、視聴者の理解と集中を助けます。

一方、配信チャネルの選定は、動画の目的・ターゲット・フォーマットに応じて適切なメディアを選ぶことが肝心です。採用サイト、求人媒体、SNS、会社説明会、メール配信など、それぞれのチャネルで適した動画尺や構成が異なります。たとえば、採用サイトでは3〜5分程度のフルバージョン動画が効果的ですが、SNSでは15〜60秒程度のショート動画が視聴されやすい傾向があります。

6. 効果測定と改善

採用動画の効果を最大化するためには、「どれだけ見られたか」だけでなく、「誰に・どう届き・どんな行動を促したか」を定量・定性の両面から把握し、改善サイクルを回す必要があります。

まず基本的な定量指標としては、再生回数・再生完了率・クリック率・滞在時間・離脱率・エントリー率などが挙げられます。たとえば動画を最後まで見た人の割合が低い場合は、冒頭の構成や長さに課題がある可能性がありますし、再生数が多いのに応募につながっていない場合は、内容が訴求力に欠けていることが考えられます。

効果測定は一度きりではなく、継続的に実施することが重要です。シーズンごとのエントリー数の変動、動画の視聴傾向の変化、競合の採用動画動向などを踏まえ、都度内容や運用方法を見直すことで、より成果の出るコンテンツへと進化させていくことができます。このように、採用動画は「作って終わり」ではなく「運用しながら育てる」ものとして捉えることが、成功への第一歩です。

採用動画を成功させる4つのコツ

採用動画は、ただ作るだけでは効果を発揮しません。内容や演出、配信方法など、視聴者に届く形で最適化されてこそ、本来の目的である「人材の獲得」「ミスマッチの防止」「企業ブランディング」などにつながっていきます。
ここでは採用動画を成功させるための4つの重要なコツについて詳しく解説します。

1. 求職者目線を忘れない

採用動画制作で最も重要な姿勢の一つが、「求職者目線を徹底すること」です。企業として伝えたいメッセージや誇りに思っているポイントがあったとしても、それが求職者にとって関心のある内容か、理解しやすい形式かという視点を常に持つことが求められます。

たとえば、事業内容の説明を延々と流すだけの動画は、企業にとっては「わかりやすい自社紹介」かもしれませんが、視聴者にとっては退屈で伝わりにくいものになってしまう可能性があります。一方で、求職者が知りたい情報である「どんな人が働いているのか」「どんな雰囲気の職場か」「自分に合う環境なのか」に応える内容は、視聴者の共感を得やすく、最後まで視聴されやすくなります。

2. 社内のリアルな空気感を伝える

採用動画でよくある失敗の一つに、「見栄えはいいが中身が薄い」コンテンツがあります。スタジオ撮影のように整いすぎた映像、PR色が強すぎるナレーション、過度にきれいな演出は、一見プロフェッショナルに見えても、求職者にとっては「現実離れしていて参考にならない」と感じられてしまうことがあります。こうした印象のズレを防ぐには、「社内のリアルな空気感を伝える」ことが不可欠です。

リアルさを演出するうえでは「欠点や課題も包み隠さず伝える」ことが効果的です。たとえば、「忙しい時期もあるけれど、チームで乗り越える風土がある」というように、ポジティブな側面とセットで現実を伝えると、信頼感と誠実さが伝わりやすくなります。企業側の覚悟や誠実さは、求職者の志望度にも直結する重要な要素です。

このように、社内のリアルな空気感を動画に反映することは、求職者の共感や安心感につながります。過剰な演出を避け、等身大の会社を映すことが、結果的に「この会社で働きたい」と思ってもらう近道になるのです。

3. スマホ視聴を前提に設計する

現代の採用活動において、動画は「スマートフォンで視聴されることが当たり前」の時代になっています。特に新卒層や若手の転職希望者は、移動中や休憩時間、就寝前など、スマホを使った「ながら視聴」で企業情報を得ることが増えています。そのため、採用動画を制作する際には、パソコンでの視聴だけでなく、スマートフォンでの視聴体験を前提に設計することが不可欠です。

また、スマホ視聴では「音を出さずに見る」視聴者が非常に多く、字幕やテロップによる情報補完が重要になります。特にインタビュー形式の動画やナレーション中心のコンテンツでは、話している内容をそのまま字幕で表示することで、音声なしでも内容が理解でき、離脱率を大幅に下げる効果があります。

4. 他社との差別化を意識する

採用動画が普及し、企業間での導入が当たり前になってきた現在、求職者は多くの動画を見比べながら企業を選ぶようになっています。その中で埋もれないためには、「他社とは違う独自性」を明確に打ち出す必要があります。つまり、採用動画においても「差別化戦略」が求められているのです。

まず大切なのは、「その会社でしか語れないストーリー」を持つことです。たとえば、社員の入社動機がユニークであったり、チーム文化に深いドラマがあったり、創業時の想いが今も息づいていたりと「オリジナルの背景」を掘り下げて伝えることで、視聴者に強い印象を残すことができます。

また、動画に登場する人物やシーンも差別化のポイントです。あえて「現場の若手社員」や「バックオフィス担当者」など、これまであまり表に出なかった人材をフィーチャーすることで、企業の多様性や組織の奥行きを感じさせることができます。

このように、差別化を意識した採用動画とは、自社らしさを丁寧に掘り起こし、それを映像というかたちで魅力的に表現することに他なりません。「似たような動画ばかり」と感じられてしまうことのないよう、設計段階から「自社ならでは」を問い直すことが求められます。

採用動画の予算・費用相場

採用動画の導入を検討する際、多くの企業が最初に気になるのが「制作にはどれくらいの費用がかかるのか」という点です。実際のところ、動画の目的や尺、制作方法（内製か外注か）、求めるクオリティによって費用感は大きく異なります。

ここでは、採用動画の一般的な制作費の目安から、目的別・品質別の費用感、内製と外注のコスト構造とメリット・デメリットまで、予算策定の参考になる情報を具体的に解説します。費用をかけるべきポイントや、逆にコストを抑えられる部分を見極めるためにも、事前の理解が重要です。

制作費の目安

採用動画の制作にかかる費用は、動画の種類や尺、撮影規模、編集工程、使用機材のレベルなどによって大きく変動します。一般的な相場として、短尺（1〜3分）の社員インタビュー動画であれば、外注時の制作費用は15万〜40万円程度が目安です。一方、企画構成や撮影ロケーション、BGM・ナレーション収録などにこだわった高品質なコンセプトムービーになると、100万〜300万円を超えるケースも珍しくありません。

費用の内訳としては、主に以下のような要素が挙げられます。

• ・ディレクション費（構成企画・撮影ディレクション）
• ・撮影費（カメラマン、機材、照明、スタジオなど）
• ・編集費（カット編集、テロップ、BGM挿入、カラーグレーディングなど）
• ・ナレーション・BGM費（プロのナレーターや有料音源の使用）

特に注意したいのは、制作会社ごとに料金体系が大きく異なる点です。パッケージ型で提供する業者もあれば、項目ごとに個別見積もりを出す会社もあります。事前に「どこまでを依頼したいか」を明確にすることで、不要なコストを削減できます。

目的別・品質別の費用感

採用動画はその目的によって、必要な品質レベルが大きく異なります。たとえば「自社採用サイトに掲載する簡易な社員紹介動画」であれば、スマホ撮影＋簡易編集で社内内製も可能で、コストはほぼゼロに近づきます。一方、「ブランドイメージの訴求」を目的とした動画は、シネマ風の撮影やプロの演者、ドローン・複数カメラによるマルチアングル撮影など、ハイエンドな演出が求められるため、数百万円単位の投資が必要です。

以下は、目的別・品質別におけるおおよその制作費イメージです。

• ・社員インタビュー動画（シンプル編集）: 10万〜30万円
• ・オフィス紹介・事業紹介動画（ベーシック構成）: 30万〜80万円
• ・コンセプトムービー（ブランド訴求）: 100万〜300万円以上

目的に応じて適正なグレードの動画を選定することで、投資対効果の高い採用施策を実現できます。

内製・外注のメリット比較

採用動画の制作方法としては、大きく「内製」と「外注」の2パターンに分けられます。それぞれにメリット・デメリットがあり、どちらを選択すべきかは企業の体制や目的に依存します。

内製のメリットは、やはりコストの安さとスピード感です。社内の人材とスマホや簡易編集ツールを活用することで、数万円以下、あるいは無料で動画を制作できます。また、社内の雰囲気や素の表情を自然に捉えやすく、求職者に対して飾らないリアルを伝える手段としても効果的です。

一方、外注の場合はクオリティの安定性と企画力が強みです。プロの映像ディレクターが関わることで、ストーリー性や撮影の演出が強化され、採用広報として対外的な印象力を高めることができます。また、編集スキルやナレーション・BGMの選定、字幕設計においても専門的ノウハウが活かされます。

採用活動のフェーズや目的に応じて「簡易動画は内製、広報用の本格的な映像は外注」といった使い分けも有効です。最近では「撮影は社内で、編集のみ外注」といったハイブリッドな活用方法も増えており、予算と品質のバランスを取った柔軟なアプローチが求められています。

採用動画×他施策で得られる4つの相乗効果

採用動画は単体でも強力な訴求力を持ちますが、他の採用施策と組み合わせることで、その効果を何倍にも高めることができます。たとえば、採用サイトに動画を掲載すれば滞在時間やエンゲージメントが向上し、スカウトメールにリンクを添えることで開封後のクリック率アップにもつながります。

ここでは、採用動画を他施策と掛け合わせて最大限に活かすための具体的な活用方法と、それぞれの施策で得られるメリットを詳しく解説します。

1. 採用サイトに組み込んで滞在時間アップ

採用動画を自社の採用サイトに掲載することは、サイト全体の滞在時間やエンゲージメントを向上させるうえで非常に効果的です。テキストや画像だけでは得られない臨場感や情報量を、動画は短時間で直感的に伝えることができます。特に、社員インタビューやオフィス紹介といったコンテンツは、閲覧者に「自分がその場にいる」ような感覚を与え、より強い関心を引き出します。

検索エンジンは、ページの滞在時間をコンテンツの質を評価する要因の一つとして見ているとされます。つまり、動画を活用して滞在時間が伸びれば、SEO上の効果も期待できます。

2. スカウトメールのクリック率向上

スカウトメールは、採用活動において貴重な直接アプローチ手段ですが、その効果を最大化するには「開封後の引き込み力」が欠かせません。ここで採用動画が強力な武器になります。特に動画リンクをメール本文に埋め込んだり、サムネイルを活用することで、視覚的なインパクトを高めることができ、クリック率の向上が見込めます。

たとえば、企業紹介や社員のリアルな働き方を30〜60秒程度の短尺でまとめた動画を添えることで、読み手の関心を瞬時に惹きつけることが可能です。テキストだけでは伝わりにくい社風や雰囲気を視覚・聴覚の両面から伝えることができるため、「なんとなく良さそう」から「一度話を聞いてみたい」という前向きな態度変容につなげやすくなります。

3. 会社説明会の理解度アップ

採用動画は、会社説明会における情報伝達の質と効率を大きく高めるツールとして活用できます。従来の説明会では、パワーポイントのスライドに沿って人事担当者が口頭で説明する形式が一般的でしたが、この方法では参加者の集中力や理解度にばらつきが生まれやすく、特にオンライン開催時には一方通行のコミュニケーションに陥りがちです。こうした課題に対して、動画は「視覚・聴覚を同時に刺激する」表現力を持つため、参加者の理解と記憶の定着を促進します。

たとえば、事業紹介や社員インタビュー、実際の業務風景をまとめた動画を組み込むことで、「話を聞くだけでは想像しにくかった現場」が、具体的なイメージとして記憶に残ります。中でも、入社1〜3年目の若手社員が実際に働く姿を映した動画は、求職者にとって「自分ごと化」しやすい代表例です。彼らはどんな仕事をしているのか、どんな人たちと関わっているのか、どのようにキャリアを歩んでいるのかといった情報が、言葉以上に強く印象に残ります。

4. 社内広報・インナーブランディング活用

採用動画は外部向けだけでなく、社内に向けた広報やインナーブランディングの強化にも活用できる点が見逃せません。特に近年では、社員のエンゲージメント向上や離職率の低下、部門間の相互理解といった「社内活性化」が、企業の競争力を高めるうえで重要なテーマとなっています。採用動画は、そのような課題に対する解決策の一端としても有効に機能します。

たとえば、採用目的で制作した社員インタビュー動画やオフィス紹介動画を社内ポータルサイトや全社会議で共有すれば、「普段接点の少ない部署の仕事風景」や「他の社員の価値観」に触れる機会となります。これにより、組織内に潜在的に存在するサイロ化やコミュニケーション不足の解消が期待できます。

まとめ

採用活動において、テキストや写真だけでは伝えきれない企業の魅力やリアルな職場の雰囲気を効果的に伝えられる「採用動画」は、近年ますます注目を集めています。社員インタビューや事業紹介、オフィス紹介、コンセプトムービーなど、目的やターゲットに応じた多様な表現が可能で、求職者の理解促進・応募意欲の向上に直結します。

採用サイトや求人媒体、説明会、SNS、スカウトメールなど、活用シーンも豊富で、ミスマッチ防止やエンゲージメント強化、採用コスト削減など多くのメリットをもたらします。また、社内向けのインナーブランディングやエンプロイーサクセスにも波及効果を持つのが動画の強みです。
制作には明確な目的設定とターゲット理解が欠かせませんが、工夫次第で大きな成果が期待できます。採用競争が激化する中、動画活用は今後の採用活動の標準施策として、ますます重要性を増していくでしょう。