ロイヤルカスタマーとは?定義や優良顧客との違い、育成戦略を解説
2025年6月24日更新

新規顧客の獲得が難しくなっている今、企業の持続的な成長を支える存在として「ロイヤルカスタマー」が注目されています。特にBtoBビジネスでは、顧客の信頼と継続的な関係性が売上の安定やブランド価値に直結するため、「ロイヤルカスタマー」という存在をいかに見極め、育成していくかが重要な課題となっています。
本記事では、「ロイヤルカスタマーとは何か?」という定義から始まり、優良顧客との違いや企業にもたらす具体的なメリット、育成方法まで詳しく解説します。
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ロイヤルカスタマーとは
ロイヤルカスタマーとは、企業やブランドに対して強い愛着と信頼を持ち、継続的に商品・サービスを利用し続ける顧客のことを指します。単なる「リピート顧客」や「購入回数が多い顧客」とは異なり、商品購入だけでなく、周囲への推薦やフィードバックの提供など、企業の成長に積極的に貢献してくれる存在です。
近年のBtoB市場においては、顧客の購買プロセスが複雑化し、比較検討段階での情報収集が高度化しています。こうした状況下でロイヤルカスタマーの存在はますます重要です。ロイヤルカスタマーは口コミや紹介といった信頼性の高い情報源として、新たな見込み顧客の獲得にも影響力を持ちます。
また、BtoBでは、商材の導入後も長期間にわたりサポートやアップセルが行われるため、ロイヤルカスタマーの継続的な利用は売上の安定性に直結します。たとえばSaaS製品においては、解約率(チャーンレート)を下げることが収益性の鍵となるため、ロイヤルカスタマーの育成は経営戦略の中心課題とも言えるでしょう。
さらに、ロイヤルカスタマーは「社外パートナー」としての役割も果たしてくれます。新機能の試用、アンケートへの積極的な協力、業界イベントでの事例発表など、企業のマーケティング活動や製品改善に多面的な貢献をしてくれることも少なくありません。
このように、ロイヤルカスタマーは単なる「顧客」ではなく、「共創者」としての可能性を秘めている点が、最大の魅力と言えるでしょう。
ロイヤルカスタマーと優良顧客の違い
「ロイヤルカスタマー」と「優良顧客」は、しばしば同義で語られることがありますが、実はその意味するところには明確な違いがあります。優良顧客とは、主に「売上への貢献度」が高い顧客を指し、購入金額や頻度といった「行動」に基づいて評価されます。一方、ロイヤルカスタマーは「行動」だけでなく「心理的な忠誠心」にも着目する点が大きな特徴です。
たとえば、ある企業が提供するソフトウェアを毎月購入している顧客がいたとしても、それが価格や利便性による「なんとなくの継続利用」であれば、ロイヤルカスタマーとは呼べません。そうした顧客は競合に魅力を感じたら簡単に離れてしまう可能性があります。一方で、多少の不便や価格の高さがあっても、「この企業を信頼しているから使い続けたい」と思う顧客こそが、真のロイヤルカスタマーです。
BtoBビジネスでは、特に導入後のサポート体制や人的なつながりが、顧客のロイヤルティに大きく関わります。営業担当やカスタマーサクセスの丁寧な対応により、「この会社となら安心して長期的に付き合える」と感じる心理的安心感は、価格や機能を超えて購買判断に影響を与えます。
つまり、ロイヤルカスタマーは「売上貢献度が高い=優良顧客」という視点に加えて、「感情的な愛着を持つ存在」であるという側面も含めて評価されるべきであり、企業にとっては最も価値ある顧客層の一つです。
ロイヤルカスタマーを構成する2つのロイヤルティ
顧客のロイヤルティには、大きく分けて「心理ロイヤルティ」と「行動ロイヤルティ」の2つの側面があります。ひとつは「この会社を信頼している」「応援したい」といった内面的な感情。もうひとつは「定期的な契約更新」「他者への紹介」といった具体的な行動です。
ここでは、それぞれのロイヤルティが何を意味し、どうやって見極め、育てていくべきかを解説します。ロイヤルカスタマーの理解を深めるうえで欠かせない2つの視点を、一緒に確認していきましょう。
1. 心理ロイヤルティ
心理ロイヤルティとは、顧客が企業やブランドに対して抱く「感情的な忠誠心」のことを指します。これは理性的な判断や金銭的メリットだけでなく、「この会社が好き」「ここなら信頼できる」という直感的・感情的なつながりに基づくものです。
たとえば、製造業向けのITソリューションを提供する企業に対して、「機能的には他社製品と大差ないが、導入時の丁寧な対応や担当者の誠実さに感動した」という体験が残っているとします。このような経験が顧客の中で積み重なることで、他社が価格を下げたとしても乗り換えず、「あの会社だからこそ契約を続けたい」という心理的なロイヤルティが形成されます。
心理ロイヤルティを高めるためには、単なる製品・サービスの提供だけでは不十分です。企業のビジョンやミッションへの共感、透明性のある情報開示、倫理的な企業活動などが、BtoBの文脈でも重視されるようになってきています。顧客が「この会社を応援したい」と思えるような存在になることが、心理ロイヤルティを醸成する鍵となるでしょう。
2. 行動ロイヤルティ
行動ロイヤルティとは、顧客が実際に取る行動によって把握することができます。つまり「継続的な購入」「利用頻度」「アップセルの受容」「紹介・口コミ」などを通じて示される忠誠心のことです。心理ロイヤルティが「内面的な気持ち」であるのに対し、行動ロイヤルティは「外に見える結果」として捉えることができます。
BtoBでは、契約の更新率やライセンス数の追加、問い合わせ頻度などが行動ロイヤルティの具体的な指標となります。また、紹介制度の活用や、カスタマーストーリーとしての事例提供なども、行動ロイヤルティの現れです。
しかし、心理ロイヤルティが高くても必ずしも行動ロイヤルティが伴うとは限りません。たとえば「この会社は好きだけど、予算の都合で今回は他社を選んだ」というようなケースも存在します。一方、行動ロイヤルティが高いからといって、必ずしも感情面でのつながりがあるとは限らないのです。
理想的なのは、心理ロイヤルティと行動ロイヤルティの両方が高い状態、つまり「この会社が好きで、かつ積極的に利用・紹介している」という関係性です。これが「真のロイヤルカスタマー」と呼べる状態です。企業としては、心理と行動の両面からロイヤルティを高めていく戦略が求められます。
ロイヤルカスタマーが重要とされる2つの理由
現代のマーケティングにおいて、ロイヤルカスタマーは単なる「リピーター」にとどまらず、企業の成長戦略の中核を担う存在となっています。なぜここまでロイヤルカスタマーが重視されているのかは、企業を取り巻く市場環境の変化と、顧客の購買行動の変容にあります。
ここでは、特に注目すべき2つの要因「新規獲得コストの高騰」と「CX重視時代における顧客中心主義の台頭」について詳しく解説します。
1. 市場変化による新規顧客獲得コストの高騰
デジタルマーケティングの発展により、かつてはリスティング広告やリターゲティング広告を活用すれば比較的容易に新規顧客を獲得できた時代がありました。しかし現在は、広告単価の高騰、競合の激化、Cookie規制の進展により、見込み顧客へのリーチ自体が困難になりつつあります。
特にBtoB領域では、1件のリードを獲得するために多額の広告費を投下しても、必ずしも商談・受注に結びつかないという課題が浮き彫りになっています。顧客の意思決定プロセスが長期化・複雑化し、営業側のリソースも大量に消費されるため、投資対効果の低下が深刻化しているのです。
こうした状況下で、既存顧客、特にロイヤルカスタマーの存在は非常に価値があります。新たに見込み顧客を探し出し、信頼を構築し、契約まで導くよりも、すでに信頼関係が築かれた顧客に継続利用してもらい、アップセルやクロスセルを行う方が、はるかに効率的で収益性も高いのです。
また、新規顧客の獲得が鈍化する中で、ロイヤルカスタマーは企業のブランド価値や信頼性を高めるための「資産」としても機能します。事例紹介やインタビュー登壇、SNSでの言及など、外部向けのアピール材料としても活用できるため、マーケティング施策全体を底上げする存在なのです。
2. CX重視の時代における顧客中心主義の重要性
もう一つの大きな要因は、顧客体験(CX)を重視する企業姿勢が求められる時代に突入したことです。製品・サービスの品質や価格ではなく、「どれだけ自分の課題や期待に寄り添ってくれるか」という観点が、顧客の評価軸の中心に移行しています。
特にBtoBでは、導入時のコンサルティング、導入後のサポート、業界知見の共有といった体験全体が「価値」として評価される傾向が強まっています。そのため、顧客との関係を一度限りで終わらせず、長期的な信頼を築くことができるロイヤルカスタマーは、企業の「CX戦略」の成果を象徴する存在でもあるのです。
ロイヤルカスタマーが企業にもたらす3つのメリット
ロイヤルカスタマーは単に「リピーター」や「頻繁に購入する顧客」とは異なり、企業にとって多角的なメリットをもたらす存在です。特にBtoBにおいては、導入から定着、継続利用に至るまでのプロセスが長期にわたるため、1社のロイヤルカスタマーが及ぼす影響は極めて大きいと言えます。
ここでは、ロイヤルカスタマーが企業にもたらすメリットについて見ていきましょう。
1. 継続購入により売上が安定する
ロイヤルカスタマーの最大の特徴の一つは、継続的に製品やサービスを購入し続ける点です。これは単なる偶発的なリピートではなく、企業の価値に共感し、信頼しているからこその選択行動であり、その結果として売上が一定水準で維持されるという恩恵があります。
特にBtoBでは、ソフトウェアのライセンス契約やサブスクリプション型のサービス利用、サポート・運用契約など、契約ベースでの継続的な収益が大きな比重を占めます。こうした商材において、ロイヤルカスタマーは一度契約して終わりではなく、アップセルやクロスセルを受け入れる傾向が強く、顧客生涯価値(LTV)を飛躍的に高めてくれます。
さらに、売上が安定することで企業側は、予算編成や人的リソースの配置、商品開発計画などにおいても長期的視野で戦略を立てることができます。経営の予測可能性が高まるという意味でも、ロイヤルカスタマーの存在は財務的なリスクを軽減する極めて重要な要素です。
2. 口コミや紹介で新規顧客を連れてきてくれる
ロイヤルカスタマーのもう一つのメリットは、自社製品やサービスに対する好意を周囲に積極的に伝えてくれる点にあります。特にBtoBでは、顧客自身が業界のキーパーソンやコミュニティリーダーであることが多く、影響力の大きい発言が商談のきっかけになることも少なくありません。
具体的には、「あの会社のサポートは信頼できる」「課題を理解したうえで提案してくれる」といった顧客の一言が、他の企業の購買意思決定に大きく影響します。自社の営業担当者がどれだけ訴求しても届かない層に、顧客のリアルな声を通じてアプローチできるのは、まさにロイヤルカスタマーならではの貢献です。
さらに、顧客紹介制度やユーザーコミュニティ、カスタマーストーリーの活用など、マーケティング戦略の一部として影響力を取り込むことで、広告やセールスのROI(投資対効果)を高めることも可能になります。紹介によって獲得された顧客はもともと信頼ベースでつながっているため、獲得単価も低く、かつ商談化率や受注率も高い傾向にあるのです。
3. 質の高いフィードバックが得られる
ロイヤルカスタマーが企業にもたらす3つ目のメリットは、的確なフィードバックを提供してくれる点です。ロイヤルカスタマーは製品・サービスの機能や課題を熟知しているだけでなく、自社の業務プロセスや業界構造を踏まえた観点から意見を出してくれるため、単なるアンケート以上の洞察が得られます。
たとえば、SaaS製品であれば、「〇〇機能のUIがわかりづらい」「この分析項目は現場ではほとんど使っていない」といった具体的かつ実務的な指摘が、機能改善や次期バージョン開発の方向性に直結します。単に「要望を伝える」のではなく、「なぜそれが必要なのか」まで言語化してくれるのがロイヤルカスタマーの特性です。
また、ロイヤルカスタマーは自社のサービス向上を願っているため、単に批判するのではなく、企業に寄り添った提案を行ってくれる傾向にあります。プロダクト開発チームとのワークショップへの参加など、協働的な関係性を築くことで、製品開発を市場のニーズと一致させやすくなります。
さらにBtoBにおいては、特定の数社からの深い洞察が、数十社・数百社の課題を同時に解決する可能性を秘めています。したがって、ロイヤルカスタマーからの質の高いフィードバックは、企業の競争力を内部から押し上げる強力な原動力となるのです。
ロイヤルカスタマーを育成・創出する4つの方法
ロイヤルカスタマーは、自然発生的に生まれるものではありません。企業が顧客と丁寧に向き合い、長期的な信頼関係を築くことで、初めて育成・創出される存在です。特にBtoBでは、商材の単価が高く、導入・運用・更新のサイクルが長期に及ぶため、ロイヤルカスタマーの形成には明確な戦略とプロセスが求められます。
ここでは、ロイヤルカスタマーを生み出すための実践的な4つの方法について解説します。これらは単独で機能するものではなく、相互に補完し合いながら、顧客との関係性をより深く強く育てていく土台となる施策です。
1. 自社におけるロイヤルカスタマーを定義する
ロイヤルカスタマーを育てる第一歩は、「自社にとってのロイヤルカスタマーとは何か」を明確に定義することです。これは単なる売上上位顧客を列挙することではなく、自社のビジネスモデルや戦略、提供価値と照らし合わせながら、理想的な顧客像(ペルソナ)を具体的に描く作業です。
たとえば、SaaS企業であれば「年額契約以上で3年以上継続利用している」「新機能に対するフィードバックが積極的」「ユーザー会や事例インタビューに協力的」といった複数の条件からロイヤルカスタマー像を策定することが考えられます。
この定義が曖昧なままだと、マーケティングや営業、カスタマーサクセスがそれぞれ異なる判断基準で顧客に接してしまい、組織としての育成施策がチグハグになります。逆に明確な定義があれば、チーム全体でロイヤル化に向けた道筋を共有でき、個別最適ではなく全体最適のアプローチが可能になります。
また、この定義は一度作れば終わりではありません。市場や事業フェーズの変化に応じて見直しを行い、「今の自社にとって最も価値のある顧客とは誰か」を常に再評価することが重要です。
2. 顧客体験(CX)を最適化する仕組みを構築する
ロイヤルカスタマーを育てるうえで、顧客体験(CX)の質をいかに高めるかは非常に重要です。BtoBにおいては、製品の品質や価格以上に「導入プロセスの安心感」「問い合わせ対応の速さ」「担当者の知見と対応力」など、顧客が接するすべてのタッチポイントでの体験が評価対象になります。
CXの最適化には、まず現状のカスタマージャーニーを可視化し、各接点での顧客の感情・行動・ニーズを洗い出すことが必要です。そこから「期待に応えている箇所」「期待を裏切っている箇所」「機会損失が起きている箇所」を明確にし、改善アクションを具体化します。
たとえば、初期契約後のオンボーディングで顧客が迷子になっているなら、動画マニュアルやウェルカムガイドの導入、定期的な導入サポート面談の設定など、体験の設計そのものを改善する必要があります。
3. パーソナライズ施策を設計・実行する
ロイヤルカスタマーを育成するためには、顧客の状況やニーズに応じたパーソナライズ施策の導入が不可欠です。BtoBの世界では、業種・業界・部門・役職によって課題やゴールが大きく異なるため、画一的な情報提供や支援では満足度が高まりません。
パーソナライズ施策とは、単に「顧客名を差し込んだメールを送る」ような表面的なものではなく、「その顧客の事業フェーズやKPIに基づいたコミュニケーション・支援を行う」ことに主眼を置く必要があります。
たとえば、製造業の企業とITベンダーでは、同じSaaSツールであっても使い方や活用シーンがまったく異なります。それぞれに最適な導入事例や活用ガイドを提供することで、顧客は「自社のために用意された情報だ」と感じ、信頼感が醸成されていきます。
さらに、パーソナライズを進化させるためには、顧客の行動データや契約履歴、問い合わせ傾向を蓄積・分析し、その傾向に応じた「次の一手」を予測・実行する体制も必要です。たとえば、一定期間ログインがない企業にはリテンション施策を、利用頻度が高い企業には上位プランへの提案を行うことが効果的です。
4. データ分析と改善サイクルで継続的に育成を進める
ロイヤルカスタマーの育成は、一度施策を実施して終わりではなく、常にデータに基づいて成果を検証し、改善を繰り返していく「サイクル型の戦略」です。特にBtoBにおいては、契約期間が長く、成果が出るまでのリードタイムも長期化する傾向があるため、定期的なモニタリングと継続的な最適化が不可欠です。
CRMやBIツールを活用して、顧客ごとの行動データや契約ステータスを可視化・分析すれば、「ロイヤルカスタマーに近づいているのか」「どのフェーズで離脱が発生しているのか」といった状況を、定量的に把握することができます。そのうえで、仮説に基づいた改善施策をABテストしながら繰り返すことで、育成の精度は徐々に高まっていきます。
さらに重要となるのは、「ロイヤルカスタマー予備軍」へのアプローチです。行動傾向やスコアリングデータに基づき、「あと一歩でロイヤル層に達しそうな顧客」を抽出し、彼らに対して重点的なコミュニケーションやパーソナライズされた支援を行うことで、優良顧客からロイヤル顧客への押し上げが可能になります。
このように、データと真摯に向き合いながら、「仮説→実行→検証→改善」のPDCAサイクルを継続的に回す仕組みこそが、ロイヤルカスタマー育成を支える原動力となるのです。
ロイヤルカスタマーを見極めるための3つの重要指標とは
ロイヤルカスタマーを育てていくうえで欠かせないのが、「誰がすでにロイヤルカスタマーであるのか」「誰がその候補となりうるのか」を定量的に把握することです。これができなければ、育成施策の対象が曖昧になり、組織全体のマーケティング・営業活動が非効率になってしまいます。
そこで活用したいのが、「LTV(顧客生涯価値)」「RFM分析」「NPS(ネット・プロモーター・スコア)」という3つの重要指標です。
ここでは、BtoB企業にとってこれらの指標がどのように役立ち、どのような観点で活用すべきかを具体的に解説していきます。
1. LTV(顧客生涯価値)
LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)は、ある顧客が生涯にわたって企業にもたらす利益の合計を表す指標です。ロイヤルカスタマーを見極めるうえで最も直感的で汎用性の高い指標といえます。
この指標は、単なる「一時的な売上の大きさ」ではなく、「継続的な収益貢献」を重視するため、BtoBビジネスとの親和性が非常に高いです。たとえば、導入後3年以上継続利用している上に、アップセル・クロスセルも積極的に行ってくれている顧客は、明らかにLTVが高く、ロイヤルカスタマーと判断できます。
LTVを把握することで、ロイヤルカスタマーの行動特性や契約傾向が見えてきます。さらに、LTVの高い顧客とそうでない顧客を比較すれば、「どうすればLTVを伸ばせるか」という改善の糸口にもつながります。
2. RFM分析
RFM分析は、顧客を以下の3つの観点から評価するフレームワークです。
- ・ R(Recency):直近の購入・利用日
- ・ F(Frequency):購入・利用頻度
- ・ M(Monetary):累積の購買金額
この3軸で顧客をスコアリングすることで、行動ロイヤルティの高低を定量的に把握できます。RFM分析の強みは「データがあればすぐ実行できるシンプルさ」と「可視化しやすいセグメント分けができること」です。
たとえば、以下のようなセグメントが一般的です。
- ・ R/F/Mすべて高い顧客→コアロイヤルカスタマー
- ・ Fが高いがRが低い顧客→離反リスクのある元ロイヤル層
- ・ Rが高いがFが低い顧客→新規顧客(育成対象)
BtoBにおいては、「頻度」が必ずしも高くならないケースもありますが、その場合は「ログイン頻度」「サポートへの接触回数」などの代替行動で置き換えることができます。M(金額)についても、必ずしも売上だけでなく「更新単価」や「追加契約額」などを指標化すれば、よりリアルな状況を反映できるでしょう。
また、RFM分析をもとにロイヤルカスタマーのセグメントを特定し、別の施策を展開することで、マーケティング全体の最適化にもつながります。
3. NPS(ネット・プロモーター・スコア)
NPS(Net Promoter Score)は、「あなたはこのサービス(会社)を他人に薦めたいと思いますか?」という質問に対して、0〜10点で評価してもらい、そのスコアに基づいて顧客ロイヤルティを測定する指標です。
回答者は次の3カテゴリに分類されます。
- ・ 9〜10点:推奨者(Promoter)
- ・ 7〜8点:中立者(Passive)
- ・ 0〜6点:批判者(Detractor)
NPSは「推奨者の割合 − 批判者の割合」で算出され、数値が高いほど顧客満足度とロイヤルティが高いとされます。
BtoBでNPSが特に有効な理由は、利用者だけでなく意思決定者・購買部門といった複数のステークホルダーからも回答を得ることで、「組織全体の評価」が見える点にあります。契約更新や拡張導入の判断は、往々にして複数部署の合意形成が必要であるため、NPSの低下は、顧客離れの予兆として機能するのです。
また、NPSを「単なる満足度調査」で終わらせず、スコアに対して「なぜそう思ったか」の自由記述を加えることで、ロイヤルカスタマーの心理的な声や不満の根源を深堀りすることができます。
さらに、NPSが高い企業では、社内エンゲージメント(従業員満足度)も高いという相関があることが知られています。つまり、ロイヤルカスタマーの存在は、外部評価だけでなく企業文化そのものの健全性を示すバロメーターとしても機能しているのです。
ロイヤルカスタマー育成でのCRM活用の重要性
ロイヤルカスタマーを育成する上で、CRM(顧客関係管理)を活用することは、単なる業務効率化の手段にとどまりません。それは、顧客との関係性を戦略的に深めていくための中核的な仕組みであり、育成の再現性と組織全体の統一的なアクションを実現する鍵となります。
BtoBのビジネスでは、顧客との関係は長期にわたって構築されるものです。一度契約を獲得すれば終わりではなく、その後のオンボーディング、活用支援、継続契約、アップセル・クロスセルといった一連の顧客体験を通じて、信頼関係を少しずつ深めていく必要があります。その過程で、誰がどのような接点を持ち、どのような課題を抱えてきたかを記録し、組織全体で共有・活用するには、CRMの存在が不可欠です。
また、CRMに蓄積されたデータは、顧客の温度感やロイヤルティを可視化するための基盤にもなります。LTVやNPS、行動履歴といった情報をもとに、「今どの顧客がロイヤル層に近づいているのか」「どの層が離反のリスクを抱えているのか」といった分析が可能になり、個別最適なアプローチが実行しやすくなります。
さらに、CRMを活用することで属人化を防ぎ、顧客体験の一貫性を維持できます。特定の担当者だけが知っている情報をシステム上に記録・共有することで、担当変更があってもサービスレベルを保った対応ができ、顧客からの信頼を失うリスクを軽減できます。
つまり、CRMは単なる情報管理の道具ではなく、顧客との信頼関係を育てていく土壌そのものであり、ロイヤルカスタマー育成を継続的に実現するための要となるのです。
まとめ
ロイヤルカスタマーは単なる「頻繁に商品を購入する顧客」ではありません。企業やブランドに対して強い愛着と信頼を持ち、継続的に商品・サービスを利用しながら、周囲への紹介や建設的なフィードバックを通じて、企業の成長に多面的に貢献してくれる存在です。
新規顧客の獲得が困難になってきている今、既存顧客との関係性を深め、ロイヤルカスタマーへと育成することが、持続的な成長戦略の要になります。LTVやRFM分析、NPSといった定量指標を活用しながら顧客ロイヤルティを可視化し、パーソナライズ施策やCX設計を通じて「選ばれ続ける企業」を目指すことが求められています。
ロイヤルカスタマーは企業にとって、最も価値あるパートナーです。彼らを理解し、共に価値を生み出していく姿勢こそが、これからのBtoB企業に求められる「顧客中心主義」の本質だと言えるでしょう。
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