チャーンレートとは?SaaS時代に不可欠な指標の本質と5つの改善策

2025年6月24日更新

チャーンレートとは?SaaS時代に不可欠な指標の本質と5つの改善策
この記事の内容
  1. チャーンレートとは?意味と重要性をわかりやすく解説
  2. チャーンレートの種類
  3. チャーンレートの計算方法
  4. チャーンレートの平均・目安とは?
  5. チャーンレートがLTVに与える影響と考え方
  6. チャーンレートが注目されている3つの理由
  7. チャーンレートが上がる4つの原因
  8. チャーンレート改善のための具体施策5選
  9. まとめ

チャーンレートとは?意味と重要性をわかりやすく解説

ビジネスにおいて「チャーンレート」という言葉を耳にする機会が増えています。特にSaaSやサブスクリプション型ビジネスを展開する企業にとっては、チャーンレートの把握と改善は経営の根幹にかかわるほど重要なテーマです。しかし、馴染みのない方にとっては、チャーンレートが何を意味するのか、なぜそれほど重要視されるのかがすぐにはピンとこないかもしれません。

チャーンレートとは、直訳すると「離脱率」や「解約率」のことを指します。もう少し具体的に言えば、「一定期間内に自社サービスや製品を解約・利用停止した顧客の割合」です。たとえば、月初に100人の契約者がいて、月末には5人が解約していた場合、その月のチャーンレートは5%ということになります。

これは、どれだけ新規顧客を獲得できていても、それと同じかそれ以上に既存顧客が離れていれば、ビジネスとしては成長できないことを示しています。つまり、チャーンレートは「ビジネスの健康状態を表す指標」と言っても過言ではありません。

また、チャーンレートは収益予測や投資判断にも大きな影響を与える指標です。たとえば、チャーンレートが高い企業は将来的な収益の安定性が低く、LTV(顧客生涯価値)も低下する傾向にあるため、投資家や経営層からの信頼を得にくくなることもあります。逆に、チャーンレートが低く、顧客の継続率が高い企業は、サブスクリプション型ビジネスにおいて「安定的な収益基盤」を持つとみなされます。

さらに、チャーンレートはマーケティングだけでなく、プロダクト開発、営業、カスタマーサポートなど、企業のあらゆる部門と関係しています。たとえば、プロダクト開発部門は、解約の原因となっている機能的課題を改善する必要がありますし、カスタマーサクセスチームは顧客の離脱を未然に防ぐ戦略を実行する役割を担います。つまり、チャーンレートは「部門横断的な取り組みの指針」となるのです。

チャーンレートの種類

一口にチャーンレートといっても、実際にはその内容に応じていくつかの種類があります。特にSaaSやサブスクリプション型ビジネスなど、継続利用が前提となるサービスでは、チャーンレートをより細かく分類して把握することで、より正確な課題分析と戦略立案が可能になります。なかでも注目すべきが「カスタマーチャーン」と「レベニューチャーン」の2つです。

それでは、代表的な2種類について、それぞれ詳しく見ていきます。

カスタマーチャーン(顧客離脱率)とは

カスタマーチャーンとは、一定期間内に契約を解約・停止した顧客の割合を指します。言い換えれば「どれだけのお客様がサービスから離れていったか」を示す指標です。これは、BtoB・BtoCを問わず、継続契約型のビジネスモデルにおいて重視すべき指標のひとつです。

たとえば、月初に100社が契約していたSaaSプロダクトで、月末に95社しか残っていなかった場合、月間のカスタマーチャーンレートは5%ということになります。シンプルな指標に見えますが、企業の事業継続性や拡大性を判断するうえでの重要なデータとなります。

特にBtoBのSaaSでは、営業活動やオンボーディング、導入支援などに多大なコストとリソースを投じて顧客を獲得するため、一度の解約がもたらす損失は決して小さくありません。そのため、「顧客をどれだけ長く維持できるか=顧客ライフサイクルの最適化」が重視されるようになっているのです。

カスタマーチャーンを正確に捉えることで、どのフェーズでの離脱が多いのか、どの業界・業種・企業規模の顧客で離脱が目立つのかなどを分析できます。これにより、オンボーディングの設計やサポート体制、あるいはプラン設計の見直しといった、具体的な打ち手へとつなげることができます。

レベニューチャーン(売上離脱率)とは

レベニューチャーンとは、一定期間内に失われた収益の割合を指す指標で、「売上ベースのチャーンレート」とも呼ばれます。単に顧客が離れた数ではなく、どれだけの売上が喪失されたかを重視する点で、カスタマーチャーンとは本質的に異なります。

たとえば、2社が解約したとしても、一方が月額1万円、もう一方が月額50万円の大口顧客であれば、レベニューチャーンのインパクトは大きく異なります。このように、顧客数では見えない「質」の部分を反映してくれるのがレベニューチャーンの特徴です。

特にエンタープライズ向けSaaSなど、顧客ごとの契約金額に大きな差があるビジネスでは、レベニューチャーンの重要性が一層高まります。仮にカスタマーチャーンが低水準に抑えられていても、主力顧客の離脱によって売上が急減するようでは、事業は安定しません。そのため、収益観点からチャーンレートを捉えることは、より実態に即した経営判断につながります。

チャーンレートの計算方法

チャーンレートを正確に把握するには、計算方法を理解することが不可欠です。計算式自体はシンプルですが、どの数値を使うかによって意味合いが変わってくるため、注意が必要です。

もっとも基本的な「カスタマーチャーン(顧客離脱率)」の計算式は以下の通りです。

チャーンレート(%)= 期間中に解約した顧客数 ÷ 期間開始時の総顧客数 × 100

たとえば、月初に100社の契約があり、その月のうちに5社が解約した場合、チャーンレートは5%となります。このシンプルな指標は、サービスの継続利用率や顧客満足度の低下を即座に表す重要な指標です。

一方、「レベニューチャーン(売上離脱率)」の計算式は次のようになります。

レベニューチャーン(%)= 期間中に失われたMRR ÷ 期間開始時のMRR × 100

MRRとは「Monthly Recurring Revenue(毎月の定期収益)」の略で、サブスクリプション型ビジネスでは主要な指標です。たとえば、ある月のMRRが1000万円で、そのうち契約終了により50万円分の売上が失われた場合、レベニューチャーンは5%です。

ここで注意したいのは、「解約をどう定義するか」によって計算結果が変わるという点です。たとえば、一時的な契約停止や、プランのダウングレードも解約とみなすかどうかは、企業ごとに定義が異なります。そのため、自社にとっての「解約とは何か」を明確にしておくことが、正確な分析には欠かせません。

つまり、チャーンレートの計算は単なる数値計算ではなく、「何を把握したいのか」というビジネス目標に応じた柔軟な視点が必要なのです。

チャーンレートの平均・目安とは?

チャーンレートをモニタリングしていくうえで、「平均値」や「目安」を知っておくことは重要です。ただし、業種やビジネスモデルによって大きく異なるため、「これが正解」という絶対的な数値は存在しません。とはいえ、一般的な基準値を知ることで、自社の数値が「健全」か「危険水域」かを判断するヒントになります。

まず、SaaS業界全体での平均的な月次チャーンレート(カスタマーチャーン)は、2〜8%が目安とされています。特にBtoB向けのエンタープライズ型SaaSでは、1〜3%程度が理想的な水準とされる一方、BtoCの低価格帯サブスクリプションでは、10%前後になることも珍しくありません。

この差は、顧客との関係性の深さや契約期間の長さ、導入ハードルの高さなどに起因しています。たとえば、BtoB企業は契約までに時間とコストをかける分、長期的な利用を前提とし、チャーンレートも低くなりがちです。逆に、BtoC向けの動画配信サービスなどは、ユーザーが簡単に契約・解約を行えるため、チャーンレートは高くなります。

レベニューチャーンについても同様で、SaaS業界では月次1〜3%以内が健全、年間で見ると10〜15%以内が理想的とされます。特に売上が上位顧客に偏っている企業では、1社の解約が大きなダメージになるため、レベニューチャーンを重視する傾向が強くなります。

チャーンレートがLTVに与える影響と考え方

チャーンレートと並んで、SaaSやサブスクリプション型ビジネスで重視されるのが「LTV(顧客生涯価値)」です。LTVとは、1人の顧客が契約期間を通じて企業にもたらす総収益を意味します。チャーンレートはこのLTVに密接に関係しており、両者を合わせて理解することが、ビジネスの収益性を最大化するカギとなります。

LTVの基本的な算出式は以下のようになります。

LTV = ARPU(1顧客あたりの平均月次売上) × 平均継続月数

このうち、「平均継続月数」はチャーンレートから逆算できます。

平均継続月数 = 1 ÷ 月次チャーンレート

たとえば、チャーンレートが月次5%であれば、平均継続月数は20カ月。逆に、チャーンが2%であれば50カ月ということになります。つまり、チャーンが低ければ低いほど、LTVは自然と高くなるというわけです。

この関係から見えてくるのは、「LTVを伸ばすためにはチャーンレートの改善が必須」という事実です。多くの企業がアップセル・クロスセルや単価向上に注力しがちですが、実は「チャーン率を1%下げるだけでもLTVが大きく伸びる」という点を見落としていることが少なくありません。

特にBtoB領域では、LTVはCAC(顧客獲得コスト)とのバランスで語られます。LTV ÷ CAC の比率が高ければ高いほど、ビジネスとしての健全性が高いとされますが、チャーンレートが高いとこの比率は急激に悪化します。

ここでのポイントは、チャーンレートによるLTVの低下は「雪だるま式」に効いてくるということです。解約により収益が減るだけでなく、過去にかけた獲得コストが回収されないまま損失化するため、利益構造全体を揺るがしかねません。さらに、LTVが低いと判断された事業は、投資家からの評価も下がるため、資金調達や成長戦略にも影響が出ることも考えられるでしょう。

このことからLTVを高めたいなら、チャーンレートの改善は最優先で取り組むべき課題だと言えるでしょう。

チャーンレートが注目されている3つの理由

かつては、ビジネスの成長を語るうえで「新規顧客の獲得」が最優先とされてきました。しかし、近年のBtoBマーケティングやSaaSビジネスの現場では、むしろ「いかに既存顧客を維持するか」が重視されるようになっています。

その象徴ともいえる指標が「チャーンレート」です。チャーンレートがここまで重要視されるようになった背景には、大きく分けて3つの理由があります。それぞれの理由を詳しく見ていきましょう。

1. SaaS・サブスクリプションビジネスの成長

近年のBtoB業界では、ソフトウェア販売が「ライセンス型」から「SaaS型」へと大きくシフトしています。従来のように初回で大きな収益を得るスタイルではなく、月額や年額で課金される継続収益モデル(MRR・ARR)が主流となったことで、企業の売上は「積み上げ式」の構造に変化しました。

このようなモデルでは、「契約して終わり」ではなく「契約後がスタート」です。いくら多くの新規契約を獲得しても、顧客が数カ月で離れてしまっては、LTVが伸びず、売上も伸び悩みます。むしろ、既存顧客の解約を防ぎ、契約期間を伸ばすことのほうが、長期的には大きな収益につながるのです。

ここで注目されるのがチャーンレートです。SaaSビジネスにおいては、この指標こそが「収益の安定性」「プロダクトの価値」「カスタマーサクセスの実力」など、企業の基礎体力を示す重要な指針と言っても過言ではありません。

また、サブスクリプションモデルの本質は「信頼関係による継続性」にあります。顧客が契約を継続する理由は、機能や価格だけではなく、「この会社なら任せられる」という信頼感によるものも大きいのです。そのため、チャーンレートは「売上指標」であると同時に、「信頼指標」としての側面も持っています。

さらに、プロダクトが改善されればチャーンレートは減少し、逆に手を抜けば顧客が離れていく。このような関係性の中で、チャーンレートは「市場の声を数値化したリアルなメッセージ」として、事業運営のあらゆる意思決定を支える役割を担っているのです。

2. 新規顧客獲得コストの上昇

チャーンレートが注目されているもう一つの大きな理由は、「新規顧客を獲得するためのコスト」が年々上昇していることにあります。特にデジタル広告市場では、クリック単価やインプレッション単価が高騰しており、限られた予算で効果的にリードを獲得することが難しくなってきました。

さらに、近年の購買行動は比較検討フェーズが長期化しており、1件の商談をクロージングするまでにかかるコストと時間が増えています。加えて、競合の増加により差別化が難しくなっているため、価格競争に陥りやすく、獲得効率がますます悪化しています。

こうした状況では、「新規を追い続ける」戦略は持続可能性に欠けます。一方で、既存顧客の解約を1件でも減らすことができれば、追加コストをかけることなく売上を守ることができます。すなわち、チャーンレートを改善することは、「コストをかけずに収益を確保する」ための最も効率的な戦略なのです。

3. LTV最大化に不可欠な指標としての重要性

チャーンレートは単なる「解約率」ではなく、「LTV(顧客生涯価値)」を構成する主要要素の一つでもあります。たとえば、同じ単価の顧客でも、継続期間が5倍違えばLTVも5倍違うというわけです。

多くの企業では「売上アップ=新規獲得の強化」と捉えがちで、チャーンレートに注目が集まりにくい傾向があります。しかし、実際にはチャーンレートを1%でも改善することの方が、新規顧客を10件増やすよりも、収益へのインパクトが大きいこともあります。

また、LTVが高ければ、獲得コストに多く投資する余地も生まれます。逆にLTVが低いと、すべての施策の効率が悪化します。つまり、LTV最大化は企業成長戦略の要であり、チャーンレートはその成否を握る指標なのです。顧客が「長く使い続けたくなる体験を提供できているか」その答えがチャーンレートに表れます。

チャーンレートが上がる4つの原因

チャーンレートを改善するためには、まずその原因を正しく理解することが不可欠です。どのようなビジネスであれ、顧客が離れていく背景には必ず何らかの理由があります。そして、その理由は企業の提供する価値、体験、環境との「ギャップ」によって生まれています。

ここではチャーンレートが増加する4つの要因について解説します。

1. 品質や機能への不満

最も直接的かつ根本的なチャーン要因は、「プロダクト自体の価値に対する不満」です。ユーザーが期待していた機能がなかった、実際に使ってみると動作が不安定だった、UIが使いづらかったといった経験が積み重なると、顧客の中で「信頼」が崩れ、最終的に解約という選択に至ります。

特にBtoBのSaaSサービスでは、導入前にプロダクトの全体像を完全に把握できないことも多く、使い始めてから不満が噴出するケースも少なくありません。たとえば、「Excelとの連携機能が想定よりも不十分だった」「API連携の仕様が分かりにくい」など、小さな技術的な問題が積み重なることで、現場レベルでの利用が進まず、結果として契約全体が打ち切られてしまうこともあります。

2. 価格設定やプラン内容への不満

次に挙げられるのが、「価格に対する不満」です。これは単に「高いからやめる」という単純な話ではなく、「価格と価値のバランス」に不満を感じたときに発生するチャーンです。

顧客は、ある程度の価格には納得していても、見合う価値を感じられなければ離脱を選びます。たとえば、導入当初は機能も多く満足していたが、利用頻度が下がったことで「この金額を支払う意味があるのか」と感じるようになる場合などが典型です。

また、料金プランの複雑さや柔軟性のなさもチャーンを招く要因です。プランが細かすぎて分かりにくい、利用状況に合わせた変更がしにくい、追加オプションが割高すぎるといったような不便さが顧客のストレスとなり、他サービスへの乗り換えを促してしまいます。

3. 競合・市況変化などの外部要因

自社の努力とは無関係にチャーンが増加してしまうケースもあります。その典型が「競合サービスの登場」や「市場環境の変化」です。他社が革新的な機能や魅力的な価格で市場に参入すると、顧客は当然ながら乗り換えを検討します。

特に、近年のSaaS市場ではニッチな分野に特化した“「特化型SaaS」が急増しており、「特定機能だけなら、あちらの方が使いやすい」という理由で、部分的にでも乗り換えが起きやすくなっています。また、クラウドサービスの進化により、データ移行や環境構築の手間が軽減されていることも、解約のハードルを下げています。

さらに、不景気や為替変動、業界再編などのマクロ環境の変化も、チャーンに大きな影響を及ぼします。たとえば、業績不振によりIT予算が削減される、合併によりサービス統一が行われる、あるいはセキュリティ基準の変更により特定のツールが使えなくなるといったことは、企業努力とは関係なく発生するものです。こうした要因も継続利用が難しくなります。

チャーンレート改善のための具体施策5選

ここでは、チャーンレートを改善するうえで効果が高いとされる5つの具体施策を紹介します。これらは単なる対症療法ではなく、顧客との関係性を本質的に見直し、「なぜ選び続けてもらえるのか」を追求する戦略的なアプローチです。以下にそれぞれの施策を詳しく解説します。

1. 製品・サービスの品質改善

チャーンレートの最大の抑止力は、顧客に「このサービスは手放せない」と思わせることにあります。その中心にあるのが「プロダクトの価値」です。どんなに営業やカスタマーサクセスが優れていても、最終的には「プロダクトそのものが業務課題を解決できるか」が選ばれ続けるかどうかの明暗を分けるポイントになります。

品質改善の取り組みは、バグ修正やパフォーマンス向上などの「守りの施策」だけでなく、ユーザーのニーズに応える「攻めの機能追加」も重要です。とくにSaaSでは、顧客の利用データを分析し、どの機能が使われていないか、どこで離脱が起きているかを可視化することで、課題の本質を掴むことができます。

また、品質とは機能やUIだけを指すのではありません。ドキュメントの充実、動作速度、セキュリティ、エラーメッセージのわかりやすさなど、顧客が「安心して使えるかどうか」も品質の一部です。チャーンレート改善を目指すのであれば、プロダクト全体の体験価値を捉え直す必要があります。

2. 料金プラン・オファーの見直し

価格は常に顧客の選択を左右する重要な要素です。チャーンレートを下げるためには、「価格に見合った価値がある」と顧客に思ってもらうことが不可欠です。料金プランの見直しで効果が出やすい施策としては、以下のようなアプローチがあります。

たとえば、利用頻度が低いライトユーザー向けにミニマムプランを新設する、機能を絞って価格を抑えたエントリープランを提供する、あるいはアップセルを促進するためのフリートライアルや期間限定割引などを設ける、などです。

また、BtoBでは導入規模や業種によって利用ニーズが大きく異なるため、柔軟なカスタムプランを提示できるかどうかも継続率に大きな影響を与えます。年額契約を前提としたディスカウント設計も有効です。

このように価格に対する不満は「コスト」そのものよりも、「コストと得られるリターンのバランス」に起因していることが多いため、チャーンレート改善の第一歩は、提供価値の見直しと、それをどう伝えるかにかかっていると言えるでしょう。

3. カスタマーサクセス強化による支援体制の整備

プロダクトが優れていても、顧客がその価値を実際に「体感」できなければ意味がありません。そのギャップを埋める存在こそがカスタマーサクセスです。特にBtoBのSaaSにおいては、カスタマーサクセス部門があるかどうかがチャーンレートに直結します。

効果的なカスタマーサクセス体制を構築するためには、単なる「問合せ対応」ではなく、「成果に導く伴走者」としての役割が求められます。定期的なヒアリング、KPI設定のサポート、利活用の提案など、顧客が「このサービスを使い続ける意味」を実感できる関わり方が必要です。

さらに、カスタマーサクセスの施策として、ユーザー同士のコミュニティを作る、定期的な勉強会やオンラインイベントを開催する、といった継続的に関係性を構築する施策の提供が、価格競争ではなく「関係資本」によって顧客をつなぎとめる力となるのです。

4. 初期導入支援(オンボーディング)の実施

解約の多くは、実は「導入初期」で決まっていることが多く、実感している企業も多いはずです。初期にうまく使いこなせなかった、導入目的が社内に浸透しなかった、活用方法が分からなかった。これらの課題が放置されると、数カ月後には自然解約という形で表面化します。

そこで重要となるのがオンボーディングの実施です。オンボーディングの目的は、単に「使えるようにする」ことではなく、「使いこなせて、成果が出る状態まで導く」ことです。そのためには、操作説明にとどまらず、利用目的に応じたユースケースの提示や、社内展開の支援、定着化を促す施策まで視野に入れる必要があります。

特にBtoBの場合、実際に利用する現場担当者と意思決定者が異なることも多いため、両者の橋渡しをカスタマーサクセスや営業が担う体制も重要です。初期フェーズで「このサービスは価値がある」と思わせることができれば、長期契約への布石となります。

5. 継続的なエンゲージメントや信頼関係の構築

最後の施策は、顧客と「関係性を育てる」という観点です。顧客がサービスをやめる最大の理由は、「代替手段があるから」ではなく、「この会社である必要がなくなったから」です。つまり、機能・価格以上に問われるのが「信頼」や「つながり」です。

継続的なエンゲージメントのためには、定期的なコンタクトを通じて「忘れられない存在」であることが重要です。製品の改善情報、新しい使い方事例、業界の最新動向など、顧客にとって価値のある情報を届ける姿勢が、信頼の土台を築きます。

また、ユーザーの成功事例を紹介したり、顧客を主役にしたコンテンツを発信することも、エンゲージメント向上に寄与します。顧客は「この企業は自分のことを理解してくれている」と感じたときに、価格や競合以上に関係性で契約を継続する傾向が強まります。

まとめ

本記事では、チャーンレートの定義から計算方法、LTVとの関係、改善施策までを包括的に解説しました。特にSaaSやサブスクリプション型ビジネスにおいては、チャーンレートの管理が事業の成長と安定性に直結します。

顧客が離脱する理由は品質、価格、サポート体制、外部環境など多岐にわたり、それぞれに対して具体的な対応策が求められます。チャーンを単なる解約率と捉えるのではなく、「顧客との関係性の指標」として理解し、プロダクト・組織・体験の総合力で向き合うことが、企業の持続可能な成長につながるでしょう。

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